2026年10月25日夕方のAIニュースまとめ。今回は「AI APIの価格競争」と「ローカル実行環境の前進」が対になる回になりました。OpenAIがAnthropicの大口顧客を最大90%割引で引き抜いているという報道が注目を集める一方、125BクラスのQwen3.8-Flash-Nextを16GB VRAMで動かす手法が2つ登場し、クラウドとローカルの両方でコストを巡る動きが活発になっています。
OpenAIが最大90%割引でAnthropicの大口顧客を引き抜く
The Decoderの報道によると、OpenAIはAnthropicの大口顧客を引き抜くために最大90%に及ぶ割引を提供しているという。Rippling、Replit、DataCampといった企業は、OpenAIへ乗り換えたことでAIコストを最大90%削減したと証言している。
Anthropicの成長は鈍化しており、OpenAIは自社のマージンを犠牲にしてでも市場シェアの獲得を優先する姿勢を鮮明にしていると同媒体は伝えています。さらにDeepSeekなど中国勢の低価格モデルが値下げ圧力を強めており、API価格を巡る競争はまだ加速しそうです。
OpenMobile-2──110以上のアプリで訓練したオープンソースのスマホエージェント
The Decoderの記事で紹介された「OpenMobile-2」は、オープンソースのスマートフォンエージェントが専有モデルに匹敵しうることを示す取り組みです。
開発者らの知見は興味深いところから始まります。スマートフォンエージェントは処理するデータ量を増やすよりも、できるだけ多様なアプリで訓練することで向上する——。この考えに基づき、研究チームは110以上のアプリを含むオープンな訓練環境を構築しました。うち35は人気アプリのレプリカ(複製)だといいます。
実機のAndroidデバイスでの評価では、このモデルはオープン系のエージェントの中で最高スコアを記録したと著者らは主張しています。スマホ操作の自動化は専有モデルの独壇場になっていた領域だけに、訓練環境ごと公開するアプローチが今後どこまで迫れるか注目されます。
Qwen3.8-Flash-Next(125B)のローカル実行が2つのルートで前進
ローカルLLM方面では、125BクラスのMoEモデル「Qwen3.8-Flash-Next」を限られたメモリで動かす試みが2つ、同じ日に投稿されました。
1つ目はStrataのフォーク「Basalt」を使ったベンチマークです。RTX 5080(16GB VRAM)+Core Ultra 9 285K+62GB DDR5-6800という環境で、IQ3_S量子化・262Kコンテキスト・int8 KVキャッシュを設定。実際のエージェントコーディングセッション(opencode、103リクエスト、最大130Kコンテキスト)で、プロンプト処理が平均5,011 tok/s、生成が平均153.0 tok/s(ピーク262 tok/s)、VRAM 15.7GB・RAM 54.1GBという数字を報告しています。注目は、99.5%のプロンプトトークンがプロンプトキャッシュから供給され、初トークンまでの時間の中央値が0.2秒だった点です。新しいプロンプトを与え続けるコンテキストスイープ(15K〜207K)でもプロンプト処理5,475 tok/s・生成154.9 tok/sと安定しており、長文コンテキストでも破綻しない実用性を示しています。
2つ目はnvme SSDへの直接オフロードを実現した「Lean-QwenFlash」です。開発者は、GLM-5.3対応の「glm-flash-lite」がモデルの規模に対して驚くほど低いメモリ使用量で動いていたことに着想を得て、その設計をQwen3.8-Flash-Nextに適応したといいます。結果は、RTX 4090でシステムRAMをわずか8GBだけ割り当てた構成(VRAM 16GB)で、短いコンテキストなら28〜33 tok/s(コードは19〜22 tok/s)、100Kコンテキストで20.8 tok/s、フルウィンドウの262Kでも20.0 tok/sの生成速度。RTX 3080 Laptop(16GB VRAM / 32GB RAM)でも100Kコンテキストを18〜21 tok/sで処理できたといいます。従来のStrata系セットアップは24kの専門家を丸ごとシステムRAM(48〜64GB)に載せる前提だったため、一般のPCやノートPCでは敷居が高かった点を考えると、大きく裾野を広げる成果といえそうです。セットアップスクリプト一式はGitHubで公開されています。
150MモデルがSLMランキング首位に──4Bの3D生成コーディングモデルも登場
超小型モデルでも動きがあります。「GPT-X3-150M」がOpen SLM Leaderboardで1位を獲得し、HuggingFaceのSmolLM2-135Mの王座を奪ったと開発者が報告しました。アーキテクチャはGDN2/GQAのハイブリッド。150Mクラスはブラウザ内実行や組み込みを狙う層で、首位が入れ替わるあたりに小規模モデル競争の活発さがうかがえます。
また、r/LocalLLaMAでは「Qwen3.5-4B-3D-Coder」の早期版を公開する投稿もありました。Qwen3.5-4Bを独立的にファインチューンしたモデルで、一般のコーディングに加えて3Dシーンの生成を狙うものです。投稿者によれば、これまで小型モデルの3D生成は結果が粗かったのですが、実用的な段階まで進んだとのこと。Q4_K_MとQ8_0のGGUFがHugging Faceで公開されており、学習データセットも学習完了後に公開される予定です。
「検閲解除」モデルを装うバックドアに注意
最後に安全管理の話題です。セキュリティ研究で知られるProject Discoveryが、abliterated(検閲解除)モデルを装ったファイルがユーザーを被害に遭わせうるという研究を公開し、r/LocalLLaMAで議論を呼んでいます。
検閲解除版のモデルは正規の配布経路以外からGGUFを入手する機会が増えがちで、出どころの確認が難しいファイルをそのまま実行する習慣と合わせると、危険な組み合わせになりえます。ローカルLLMのメリットを損なわないためにも、GGUFの入手は信頼できる配布元に限定し、出どころ不明な「検閲解除版」には手を出さないのが現時点では妥当な線といえそうです。