2026年10月29日昼の回です。朝はGoogleのモデル・開発環境・消費者機能の3層攻勢が目立ちましたが、昼はオープンモデル陣営の新作と、AI半導体・決算の数字が並ぶ一日です。
Qwen4は100万トークンコンテキストへ──Qwen4-maxは11月1日の可能性も
RedditのLocalLLaMAコミュニティで、AlibabaのQwen4シリーズが100万トークンのコンテキストウィンドウに対応するとの情報が報じられました。情報源はQwen公式CLI「qwen-code」のプルリクエストで、モデル一覧の記述から読み取れた形です。
同じ報告によると、Qwen4-27Bは10月30日にオランダで開催されるApsara Conferenceでの発表が有力視されています。フラッグシップのQwen4-maxには11月1日という日付が表示されていましたが、「10月1日と書かれた箇所もありプレースホルダーの可能性がある」との慎重な見方も添えられています。
ローカルLLMの利用では長文処理の需要が高く、100万トークン対応が本当ならリポジトリ全体や長編ドキュメントをそのまま放り込む運用が現実的になります。公式発表を待ちたいところです。
Liquid AIの「LFM3-Omni-2B」──2.2Bで見て・聞いて・話す、スマホでも動く
Liquid AIが、LFM3ファミリー初のオムニモーダルモデル「LFM3-Omni-2B」をHugging Faceで公開しました。テキスト・画像・動画・音声を入力として理解し、テキストと音声の両方で応答します。従来はASR(音声認識)・ビジョン言語モデル・LLM・TTS(音声合成)を別々に組み合わせていたところを、1つのエンドツーエンドモデルに置き換える設計です。
注目はそのサイズです。総パラメータ2.17Bで、スマホやノートPCといったエッジデバイスでの動作を前提にしています。コンテキスト長は32Kトークン、テキストは日本語を含む16言語、音声は19の言語・ロケールに対応。動画は2fpsでフレームをサンプリングしつつ音声トラックも同時に「聴き」、映像とその音の両方に言及する質問に答えられるのが特徴です。提供形態もGPU向けBF16(SGLang・Transformers)に加え、CPUでも動くGGUF(llama.cpp、リアルタイム音声サーバー対応)が用意されました。
ベンチマークでは、動画+音声理解のDaily-Omniで70.09を獲得し、Qwen2.5-Omni 7B(61.32)やGemma 4 E2Bを上回るなど、2.2Bとは思えない成績を並べています。reasoningには非対応ですが、ファインチューニング用ノートブックも同時公開で、ドメイン特化のカスタマイズまで見据えたリリースです。朝伝えたNVIDIAのNemotron 3.5 Transcribeが録音済み音声の書き起こし特化だったのに対し、こちらは対話としての音声入出力を1モデルでこなす路線。エッジデバイスで動く音声アシスタントの実現コストが一段と下がりそうです。
AI半導体「メガサイクル」──Samsungはキャペックス6割増、アドバンテストも上方修正
Samsung Electronicsが2026年の設備投資を**84兆4000億ウォン(約630億ドル)**と、約60%引き上げる見通しを明らかにしました。AIインフラの絶え間ない需要がメモリ価格を押し上げ、7〜9月期の半導体部門営業利益は前年同期比15倍に急増。ただし投資家の期待があまりに高かったため、利益は市場予想には届きませんでした。SKハイニックスやMicronとの競争が続く中、供給能力の拡大を急ぐ構えです。
日本勢にも追い風があります。半導体試験装置大手のアドバンテストは、AIブームによる半導体需要を背景に2026年度の通期業績予想を売上高約1兆8630億円に上方修正しました。CEOはAI半導体市場を「メガサイクル局面」と表現し、CPUや光電子融合への期待も語っています。
スタートアップ側も活発です。韓国のAIチップ企業FuriosaAIはシリーズDで6億2000万ドルを調達し、企業価値を4倍の29億ドルに引き上げました。米Infinitum Partnersがリードし、韓国の成長基金が2億8000万ドルを出資。NVIDIAへの挑戦者として資金を固めつつあります。
MicrosoftがAzure売上を初めてドル開示──332億ドルでAWSに肉薄
朝の記事では「MicrosoftがOpenAIから四半期100億ドルの収益を計上」をお伝えしましたが、同じ決算発表にはもう一つの初公開が含まれていました。MicrosoftはAzureの四半期売上を初めてドル建てで開示し、その額は332億ドルだったのです。クラウド市場首位のAWSとの差がどれだけ縮まっているかが、初めて数字で可視化された形です。AIの行く末を巡る議論が続く中、決算数字は提携の実態を示し続けています。
Oracleは2029年度FCF 300億ドル見通しで急騰──GoogleはAI検索広告をグローバル展開
AIデータセンターへの巨額投資の回収を巡る不安が広がる中、OracleのCFOはラスベガスでの年次カンファレンスで、2029年5月期のフリーキャッシュフローが300億ドルに達する見通しを示しました。市場は同年もマイナスが続くと見ていたため、株価は急騰。AI投資に収益化の道筋があることを示した形です。
Googleにも動きがあります。AI検索の広告を世界中に展開すると発表しました。コア広告の成長鈍化を背景に、親会社Alphabetの第3四半期売上は前年同期比25%増の1276億ドル。朝伝えた「GeminiとSearchをアプリに開放」という消費経路の再設計に対して、収益化側の布石が具体化しつつあります。
Qwenの重みの中でDoomが走る──「qwenputer」の上を
LocalLLaMAコミュニティでは、LLMの重みの中に仮想コンピュータを構築する実験が続いています。先日公開された「Qwenの重みの上に32bit RISC-V CPUを組み上げる」試み(qwenputer)の仮想マシン上で、投稿者が基本版Doomの起動に成功しました。「かなり遅いが、ちゃんと動いている」とのこと。モデルの重みが計算装置として振る舞う様子は、LLMの内部理解への新しい切り口にも見えます。
まとめ
今日昼の6本を振り返ると、オープンモデルは「Qwen4の100万コンテキスト」と「2.2Bのオムニモーダル」という両極端な方向が同じ日に見えました。巨大化と小型化の二方向が並走する構図です。一方で決算・投資の数字はメガサイクルの持続を裏付けつつ、Azure初開示やOracleのFCF見通しのように「回収の見える化」のフェーズに入った感があります。モデルの進化とインフラの金額、両方のスケール感が同時に膨らんでいく2026年秋です。
