テレンス・タオ氏が「AI支援科学のためのCERN」構想を提案

フィールズ賞受賞の数学者テレンス・タオ氏が9月17日、自身のブログに「A CERN for AI-assisted science(AI支援科学のためのCERN)」と題する記事を公開した。タイトルが示す通り、AIを活用した科学研究のための大規模な国際的共同基盤――欧州原子核研究機構(CERN)になぞらえた組織――の構想を論じたものとみられる。

現時点では原典のブログ記事が公開されたばかりで、Hacker Newsでの議論もこれから広がる段階だ。詳細な論点は原典に当たって確認してほしいが、タオ氏はこれまでにもAIを使った数学研究の実践報告を重ねており、今回の提案もそうした経験を踏まえたものとみられる。個々の研究者によるAI活用から「科学全体で共有するインフラ」へという方向性が、実際にどんな設計として語られているのか、注目したい。

学習なしで「Jev互換」を自作する試みが好結果

ここ数日で急速に注目を集めている「Jev」だが、専用のファインチューニング済みモデルを使わず、通常のオープンウェイトLLMのままJev的な検証を行う試みが、RedditのLocalLLaMAコミュニティで報告された。

投稿者「Malfeitor1235」の構成はシンプルだ。各候補解答を真偽判定(boolean検証)問題に変換し、テキストを生成させずにtrue/falseのlogitsを読み取る。候補ごとのスコアの差分をsoftmaxして答えを選ぶ。高コストな状態・問題・選択肢の共通prefixは一度だけ評価し、末尾だけが異なる候補ブランチをllama.cppでバッチ処理することで、計算量を抑えている。

32,235問のベンチマークでは、Qwen3-4Bが65.0%(約27 req/s)、Qwen3 27Bが75.3%(約2.9 req/s)、Qwen3.6 35B-A3Bが75.5%(約5.3 req/s)という結果だった。いずれもラップトップ向けのRTX 5090 24GBで測定されたという。投稿者によると、手を加えていない素のモデルでもこのアプローチは「驚くほどうまく機能」し、同じモデルがOpenJevのファインチューニングを上回ることもあったとのこと。ただし投稿者自身が「ベンチマーク条件が完全に同一かは保証しない」と留保している点には注意したい。

実装はRust製のWebサーバーとしてGitHubに公開されており、Hugging FaceのGGUFモデルをJev互換APIでローカル実行できる。Jev系の動きを実測フェーズから自作フェーズへ広げる一例として、興味深い。

Ling 3.0 Tiny vs Gemma 4 26B-A4B──速さと精度のトレードオフを実測

同じくLocalLLaMAに、小規模MoEモデル「Ling 3.0 tiny」とGemma 4 26B-A4Bを同じタスクで突き合わせた詳細な実測が投稿された。タスクはオーディオブック制作パイプラインの一部で、小説の対話行ごとに話者を割り当てるという、実運用に根ざしたものだ。

Ling 3.0 tinyは総パラメータ7.9B・active 1.3BのハイブリッドKDA/MLA構成。Q4_K_M量子化で4.8GBしかなく、8GB VRAMのカードにモデル全体が載り、プロンプト処理もGPUで完結する。一方のGemma 4 26B-A4B(QAT Q4)は14GBあり、専門家(expert)をシステムRAMに退避させて運用する。

結果は厳しかった。3章・485行の話者割り当てで、Gemmaが94.6%の一致率なのに対し、Lingは56.9%。一人称の語りで「私」が誰かを追えず、語り手の台詞を別の登場人物に割り当ててしまう場面が目立ったという。プロンプトの指示に明記された語り手を「正体不明のナレーター」としてUnknownへ送る誤りも多く、サンプリング設定やthinkingモードの変更では改善しなかった。

一方で速度はLingが全体で1.8倍速く、VRAMも1.5GB余らせられる。5Kトークンのプロンプトに対して well-formed なJSONを返す「このカードで走らせた中では最速」のモデルであり、タスク次第では有力な選択肢だ。ただ投稿者は「57%対95%は使えない」として不採用を結論づけ、「これは設定の問題ではなく、1.3B activeという能力の床(capability floor)」と分析している。速さの代償がどこで効いてくるかを示す、丁寧な実測として参考になる。

「AI業界の全員が絶滅リスクを信じているわけではない」──BBC報道

AIをめぐる世間の描像には「業界関係者はこぞって人類絶滅リスクを訴えている」というものがある。BBCの報道「Not all AI workers think the tech could kill everyone」は、その描像が実態とかみ合わない部分があることを伝えている。AI企業で働く人々の間でもリスクの捉え方は割れており、職種や立場によって懸念の度合いは大きく異なるという主旨だ。

「AI安全」をめぐる議論は日本でも過熱気味だが、当事者自身の認識が多様だとすれば、報道や世論の枠組みを見直す材料になりそうだ。

NVIDIAフアンCEO「誰と夕食を食べるか調べると、翌日相手の株価が2倍になる」

ITmediaの報道によると、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOがGPU投資をめぐる熱狂をこう皮肉った。「私がどこで、誰と夕食を食べるのかを調べてみることだ。そうすると、相手の株価が翌日に2倍になる」。

ジョークを含んだ発現ながら、GPU供給網と提携先をめぐる思惑が市場に与える影響の大きさを象徴する言葉といえる。実際、NVIDIA周辺のわずかな情報で関連銘柄が大きく動く状況は続いており、巨額マネーがどこに向かうのかを見極める難しさを物語っている。

日本の職場ではAI研修未経験が9割──学びたい人は4割超なのに

ITmedia キーマンズネットの調査報道では、職場でAI研修を受けたことがある人は1割未満にとどまる一方、「AI・デジタルスキルを学びたい」と答える人は4割超に達することが分かった。企業ではAI活用やDX推進が求められる一方で職場でAIが話題にならず、研修機会も限られている。学ぶ意欲と機会のギャップが浮き彣りになった形だ。

同じ日のキーマンズネット記事群は、現場の別の側面も伝えている。大和鋼管工業はSaaS増加で複雑化したライセンス管理を「情シスAI」で一元化する取り組みを始め、双日テックイノベーションの調査ではCopilot・M365導入企業の87.5%が「情報の分散」を課題に挙げ、96.2%が社内情報を横断的に検索できるAI環境に期待を寄せた。ツール導入は進んでも社内知識の検索・活用で困っている企業は多く、「研修のような人的基盤」と「情報基盤」の両方が追いついていない現状がうかがえる。