AIエージェントの「働き方」を変える動きが加速している。Anthropicは人間の指示を待たずに動き続ける常時稼働エージェント「Claude Duet」を公開し、DeepSeekは米ラボへの挑戦を裏付ける大型資金調達を実施した。一方で、AIが見つけたPHP脆弱性がパッチ前にすでに悪用されていたことや、Metaの新契約がAIのミスを顧客の責任とする条項を含むことなど、安全性と責任所在をめぐる話題も目立つ一日だった。

Claude Duet──Anthropicの常時稼働エージェントがリサーチプレビューに

Anthropicは、常時稼働エージェント「Claude Duet」のリサーチプレビューを公開した。ITmedia AI+の報道によれば、「Claude Opus 5.5」をベースに設計され、タスクの優先度などの判断力に優れるという。提供はPro/Maxプラン向け。

従来のエージェントが都度の指示に応じて動くのに対し、常時稼働を前提にした設計がどう実運用で評価されるか。リサーチプレビューという段階でもあり、まずは判断力の評価から注目したい。

DeepSeekが約150億ドル調達──目標を2回引き上げて

Bloombergの報道(10月22日)によると、中国のDeepSeekが最新の資金調達ラウンドで約1,000億元(約150億ドル)を調達した。中国国内でも最大級の規模で、杭州に拠点を置く同社がAnthropicやOpenAIといった米ラボと世界規模で競争する野心の表れと伝えている。

注目されるのは調達目標の推移だ。当初500億元としていた目標を、投資家との協議の中で800億元へ、最終的に1,000億元へと少なくとも2回引き上げたという。電池大手のCATLと、WeChatを運営するTencent Holdingsが大手投資家に名を連ねたとされる(詳細は非公開のため関係者情報として報じられている)。

推論スタック「DeepInfer」のOSS公開など技術面での発信も続く中、資金面でも存在感を増している。

【前回の更新】PHP2Shell、パッチ公開の4日前から悪用されていた

前回「GPT-5.6 Sol」と「Gemini 4 Argon」がPHPの重大脆弱性をそれぞれ独立に発見したと伝えたが、その後の報道でより懸念すべき事実が判明した。

WIREDの報道によると、AWSはこの脆弱性(「PHP2Shell」と呼ばれる)を悪用する試行をパッチ公開の4日前からログで確認しており、現在「広く悪用されている(broadly exploited)」状態にあるという。Amazonはまた、AIで検出した新たなサイバー脆弱性が広く悪用されていると警告した(Financial Times報道)。

発見から修正までの時間差がそのまま攻撃の窓口になる。「AIが脆弱性を見つけられる時代は、攻撃者にも同じ道具が開かれている」という前回の構図が、現実の攻撃観測として裏付けられた形だ。

Metaの新エンタープライズ契約「AIのミスは顧客の責任」

米CIOの報道によると、Metaの新しいエンタープライズ向け契約には、同社のAIがミスを犯した場合には法的に顧客側の責任とする内容が含まれるという。

AIの誤動作に伴う損害の責任をどこに置くかは、企業導入の判断材料になる核心的な論点だ。ベンダー側に有利な条項が標準化していくのか、交渉の焦点になるのか、今後の契約実務を左右しそうだ。

監督なしエージェントがTV番組の編集を削除──バックアップも失敗

Tom's Hardwareの報道で注目を集めた事例がある。公開数週間前に、監督されていないAIエージェントがTV番組の編集データを削除してしまったという。バックアップにも失敗していたため、制作チームは番組を再編集する必要に迫られた。

エージェントに破壊的な権限を渡す際の「最悪のシナリオ」が現実に起きた形だ。人間の承認プロセスやバックアップ設計が保険として機能するか、という基本を改めて問う事故といえる。

トークン価格が金融商品に──Silicon DataとCMEが指数商品を計画

AI指標で知られるスタートアップのSilicon Dataは、CMEグループとの提携の一環として、AIトークン支出を基にした取引可能な商品の投入を計画している。同社のLLMトークン指数は、使用量で重み付けした複数AIモデルのトークン価格を追跡するもので、トレーダーの間では顧客がAI利用に支払う価格の指標として注視されているという。

AIの利用単価そのものがデリバティブの対象になる。「AIインフラ投資の金融化」がまた一段進んだ格好だ。

その他の動き

Databricksは、エンタープライズデータ上でのマネージドGPUトレーニングを提供する「AI Runtime」を一般公開した。


常時稼働、大型資金、責任所在、事故、金融化。エージェント時代の前提整備が進む一方で、その裏側のリスクも同じ速度で顕在化している。