規制と投資が同時に動いた一日だった。米国土安全保障省(DHS)は中国DeepSeekの製品を連邦民間機関から排除する命令を官報で公示。サプライチェーン単位の遮断ともいえる内容で、政府と取引するベンダーへの影響が注目される。一方、インフラへの投資は止まらず、NscaleとAnthropicが450億ドル規模のコンピュート契約を交渉中と報じられた。開発者向けにはBedrockのClaudeでのstructured outputs対応など、着実な機能更新も重なっている。
米国土安全保障省、DeepSeekを連邦機関から排除──第三者実装製品も対象
DHSは中国DeepSeekの製品および関連サービスを、連邦民間機関の調達とITシステムから排除する命令を官報で公示した。ITmediaの報道によれば、排除対象はDeepSeek自社製品にとどまらず、同社の実装を用いた第三者製品も含まれる。連邦調達サプライチェーン安全法に基づく措置で、勧告と証拠を検討した上で発令されたという。
ロイター通信も「米政府が中国AI DeepSeekを政府機関のITシステムから禁止する」と伝え、BBCは「中国との技術緊張が続く中での決定」と報じた。海外メディア各社が一斉に扱う規模の動きだ。
注目されるのは「第三者実装も対象」という点だ。DeepSeekのオープンウェイトを組み込んだ製品や、同社モデルをAPI経由で利用するサービスまで調達対象から外れる可能性があり、連邦政府と取引するベンダー各社には影響が及びうるとみられる。機密情報を扱う政府システムへの外国製モデルの流入を、個別製品ではなく調達チェーン全体で防ぐ姿勢と受け止められる。米中のAI規制を巡る綱引きが、具体論のフェーズに入りつつある。
NscaleとAnthropic、450億ドルのコンピュート契約を交渉か
TechCrunchの報道によると、NscaleとAnthropicが450億ドル規模のコンピュート契約について交渉中だと伝えられている。交渉が実現すれば、Anthropicが過去1年で結んできた一連の巨大コンピュート契約の最新例となるという。
Anthropicは直近の決算報道でも急成長とその減速兆候が同時に語られる状態が続いており、計算能力の確保は経営の柱の一つになっている。モデル性能の向上に伴い推論需要が膨らむ中、450億ドルという規模の調達が実際に動くのか、今後の発表を待ちたい。
Amazon BedrockのClaudeがstructured outputs対応──JSONの後処理が不要に
AWSは機械学習ブログで、Amazon Bedrockにおいて全Anthropic Claudeモデルでstructured outputs(構造化出力)が利用可能になったと発表した。対象はbedrock-runtimeとbedrock-mantleの両エンドポイントで、Boto3経由でもMessages API経由でも、定義したスキーマに準拠したJSONレスポンスを受け取れる。
これまでLLMアプリ開発では、モデルの出力が壊れたJSONだった場合のパース処理、リトライロジック、後処理を自前で用意する必要があった。それがAPIレベルで保証されることになり、信頼性が求めれる業務システムへの組み込みがかなりやりやすくなる。
AWSが挙げる応用例は実務的だ。財務報告書やコンプライアンス文書からの必須フィールド抽出、臨床メモの電子カルテ(EHR)へのパース、製品カタログのリッチ化、契約書の重要条項・当事者・義務の分析、サポートチケットのルーティングなど。出力形式の保証が前提になる業務での採用が見込まれる。
OpenAI、低リソース言語でのコーディング改善──COBOL移行の新評価も
OpenAIは「低リソースプログラミング言語におけるコーディングの前進」と題する記事を公開した。ChatGPTを学習データの少ないプログラミング言語でどう改善したかを説明する内容で、ソフトウェアエンジニアリング、SQLite、COBOL移行に関する新しい評価も紹介している。
レガシー言語の扱いは実務上の重要課題だ。特にCOBOLで書かれた基幹システムの現代化は世界各地で人手不足に悩む領域で、生成AIが移行作業をどこまで担えるかはエンタープライズ向けの価値に直結する。評価の詳細な数値は本文で確認してほしい。
Firmus取りやめ後の韓国──Eliceがコスダック上場でAI投資家の神経を試す
Bloombergの報道によると、韓国のデータセンターインフラ企業Eliceが今週火曜、テック系中心のコスダック市場に上場する。ソウル拠点のneoccloud事業者で、2010億ウォン(約1億5,100万ドル)の調達を見込む今年の同取引所最大のIPOとなる。公開価格は9万500ウォンで提示レンジの最上限、上場後の時価総額は1兆ウォンを超える見通しだ。
今月、同業のFirmusが注目を集めていた上場を取りやめたばかり。AI関連株の混乱が続く中、投資家がEliceのデビューをどう迎えるかは、業界全体への信認の度胸試しになると同メディアは伝えている。
政府18万人に「源内」──税金で動かすAIのコスト設計
国内では、デジタル庁が全府省庁の職員約18万人に生成AI「源内」を提供する計画が報じられた。ITmediaの記事によれば、情報の機密性に加え「税金で運用するAIのコスト感」が解決すべき課題として挙げられている。
18万人規模となると、トークン単価の小さな差が年間コストに大きく響く。民間なら収益で回せる投資も、公金では説明責任が伴う。どういう工夫でコストを抑えるのか、公開されている情報はまだ概要レベルだが、行政AIの大規模展開として国内の先行事例になりそうだ。
