10月9日2本目のAIニュースまとめ。1本目ではAnthropicの利用ポリシー改定、Claudeの新機能、GoogleによるGeminiのエージェント化、OpenAIの数学論文をめぐるボイコット騒動、AWSエージェントの乗っ取り脆弱性などを伝えた。今回は1本目のGeminiエージェント化に早速続報が出た話、Scale AIが監査で不正を発見されコーディングベンチマークから89タスクを削除した件、企業利用モデルの6割超が中国製になったというRedMonkの分析、OpenAIの収益見通し、米政権のAI研究支援と「AI」呼称をめぐる発言、そしてAIインフラを支える電力と光部品の供給事情を中心に整理する。
Googleの新「Gemini Agent」にClaude Opus 5.5/Sonnet 5.5──マルチモデルの職場エージェントへ
1本目で「GoogleがGeminiをエージェント化」と伝えた動きに、すぐ続きが届いた。ITmediaの報道によると、Google Cloudは新サービス「Gemini Agent」を発表した。クラウドで動作するマルチエージェントツールとされるもので、Geminiに加えてAnthropicの「Claude Opus 5.5」「Claude Sonnet 5.5」が利用可能だと明かされ、他のモデルも今後追加される予定だという。
1本目の報道では、エージェントが仕事をサブエージェントに委任し「複数のAIモデルを使い分ける」という構図が伝えられていたが、その中身として、競合であるAnthropicの現行モデルが名を連ねた形だ。Bloombergも、Googleが職場で同僚のように振る舞うGeminiエージェントを発表し、OpenAI・Anthropic・Microsoftとの法人顧客をめぐる競争を激化させたと伝えている。質問への回答からコンテンツ制作、コーディングまで幅広いタスクに使えるという。
自社モデルだけでなく他社モデルを束ねて「職場のエージェント」として提供する──プロバイダーの垣根を越えたこの構えは、法人向けAIの主戦場がモデル単体の性能から、エージェント基盤の使い勝手へと移りつつあることを示している。
Scale AI、SWE-Bench Proから89タスクを削除──監査で「ゲーミング」発覚、修正は自己採点
コーディングAIの性能を測るベンチマークをめぐる信用問題がまた一つ表面化した。The Inferenceの報道がHacker Newsで取り上げられているものだ。Scale AIは、コーディングベンチマーク「SWE-Bench Pro」について第三者監査で「ゲーミング」(スコアを不当に稼ぐ仕掛け)が見つかったとして、89タスクを削除した。さらに報道の見出しが示す通り、その後の修正をめぐっては同社自身が採点を行ったという。
ベンチマークの数字はモデル選定の意思決定に直接使われる。運営主体に利害が絡む評価で不正が見つかり、その修復まで自己採点となれば、数字を額面通りに信じるわけにはいかなくなる。1本目で伝えたLMArenaの評価額急増(「モデルが嘘をつくか」の測定への参入)とも重なるテーマだが、性能評価を誰がどう検証するかという問いは、モデルが高度化するほど深刻になりそうだ。
企業が使うAIモデル、1年半で6割超が「中国製」に──RedMonkのオープンモデル分析
@ITの報道によると、調査会社RedMonkがオープンウェイトモデルの現状を分析したブログ記事を公開した。注目すべきは「企業が使っているAIモデルのうち6割超が、1年半の間に中国製になった」という点で、同社は「最高性能のオープンモデルはほぼ中国発」だとその理由を説明している。
分析は地理的要因、ライセンス、能力、リスク、経済モデル、リリースタイミング、サイズ、蒸留という8つの観点から行われた。オープンウェイトモデルの供給構造が米中でどう違うのか、そして企業の調達判断に何が効いているのかを体系的に整理した内容で、ローカルLLMへの関心が高い日本の利用者にとっても示唆の多い材料と言えそうだ。
OpenAI、年末までに年換算収益700億ドル到達・超過へ──9月末時点は約500億ドル
Bloombergが匿名の関係者話として伝えたところによると、OpenAIは2026年末までに年換算収益700億ドルに到達、またはそれを超える見通しだという。牽引役は主に企業向け事業の成長で、9月末時点の年換算収益は約500億ドルだったという。
1本目のまとめでは「OpenAIの年換算収益が、これまで報じられていた約700億ドルより200億ドル少ない」という報道を伝えた。Bloombergの新報道は、その「500億ドル」という現在地から年末にかけ700億ドル規模へ急拡大するという成長見通しとして話を具体化した形だ。四半期で約200億ドルを追加するペースが実現するなら、法人需要の伸びが個人向けを大きく上回っていることになる。
トランプ政権が24億ドルのAI研究支援公約を発表──大統領は「AI」と言う者を「敵」と表現
米政府とシリコンバレーの連携も動いている。Bloombergによると、トランプ政権はワシントンで開かれたサミットで、シリコンバレー大手による総額24億ドルの研究支援公約を発表した。AIツールやコンピュートクレジットの提供を含み、AIの推進・活用を図る政権の取り組みの一環という。
一方で、用語をめぐるねじれも続いている。Axiosの報道によると、トランプ大統領は「AI」という言葉を使う人々を「敵」と表現し、ホワイトハウス自身は先月の大統領令で定められた「超知能(SI)」の呼称を使い続けているという。先月「AI」が行政上「SI」と呼び替えられて以降、政府発信と一般の用語が分岐しており、政策の実体とラベルの乖離がかえって分かりにくさを生んでいる面もありそうだ。
AIインフラの現場──Oracleは天然ガスをトラックで搬入、光部品は2029年まで完売
AIデータセンターの物理的制約を示す2つの報道が目を引いた。
1つはBloombergが伝えるOracleの対応だ。同社はガスパイプラインの敷設を待つ間、ソルトレイクシティ郊外のデータセンターへ天然ガスをトラックで直接搬入する方法で、1年以上にわたり運転を維持したという。電力・エネルギー供給の遅れがデータセンター建設のボトルネックになる中、正規インフラが整うまでの「つなぎ」を物流で埋めるという、やや乱暴にも見える工夫の表れだ。
もう1つは光部品の需給だ。NVIDIAが出資するLumentum HoldingsのCEOは、AIデータセンターの高速化需要を背景に、同社の光コンポーネントが2029年初頭まで「完全に完売」の状態だと明かした(Bloomberg)。一部製品は来年を通じて需要の約70%にしか応えられない見通しという。GPUだけでなくネットワーク部品の供給能力が、AI拡張の実効的な上限になりつつある。
そのほかの動き
- 決済大手Visaは、AIによるサイバー防御システム「Project Glasswing」をオープンソースとして公開した(Visa/Hacker News経由)。防衛側のノウハウを共有財にする試みとして注目される。
- Union Square Venturesは、コアファンドをほぼ倍増させる9億ドル規模の追加調達を行う一方、ゼネラルパートナーを4人に絞り込んだ(Bloomberg)。AI時代に向けたベンチャー資本の組織再編の一例。
- 米大手銀行6行は第4四半期も通常を上回るペースの社債発行を続け、AIブームが生む資金需要を賄うとみられる(Bloomberg)。
- ローカルLLM界隈では、Qwen3.8-27BがRyzen 9700で159トークン/秒、Strix Haloで64トークン/秒という実測が報告され話題に(Reddit)。
- 中国StepFunの次期モデル「Step 5」のプレビューがOpenRouterに現れたとの報告が出ている(Reddit)。
- 損害保険ジャパンは約2万人への「Gemini Enterprise」導入にあたり、「使われないこと」と「不適切に使われること」をリスクと捉えた運用体制を築いたと推進者が語った(ITmedia)。
- 2兆円規模の支援を受けるラピダスは東芝など半導体設計企業17社と提携したが、「顧客不在」の懸念がくすぶり続けているとITmediaが伝えた。
- 研究ピックアップとして、DeepMind Instituteが「Bending the Curve of Discovery」と題するAIと科学を論じるエッセイを公開した(DeepMind)。また、5000万トークンのウィンドウを持ち、再計算より高速で安価という長期記憶の手法を提案する論文も公開されている(arXiv)。
