10月8日(日本時間)早朝に収集した海外AIニュースの最大の話題は、OpenAIがChatGPT全ユーザー向けに「Intelligent UI」の展開を開始したことだった。応答がテキストの羅列ではなく、チャートやボタン、フォームといった操作できる画面に変わる大きな転換で、無料ユーザーにはGPT-6 Luna、有料ユーザーにはGPT-6 Solが提供される。価格面でも動きがあり、AnthropicはClaude Haiku 5.5を最大90%の値下げで投入した。NVIDIAとMicrosoftは共同開発チップ「RTX Spark」を搭載したSurface Laptop Ultraを発表し、「エージェントが住むWindows」への作り替えを始めている。さらにOpenAIのDecisions APIとLiquidAIのオープンなd1が相次いで登場し、「decision model」という新しいモデルカテゴリが一気に熟してきた。
ChatGPTに「Intelligent UI」──応答が操作できる画面になる
OpenAIは10月7日、GPT-6をChatGPTにグローバル展開するとともに、応答をインタラクティブなUIに変える「Intelligent UI」を全ユーザーに提供すると発表した。The Decoderの報道によると、新UIでは答えがチャート・ボタン・フォーム・ミニアプといった操作できる要素として構成され、モデルが「考えながら」応答を返し始めることで待ち時間を44%削減できるという。無料ユーザーにはGPT-6 Luna、有料顧客には上位のGPT-6 Solが割り当てられる。
チャットボットの基本形が「文字の応酬」だったという前提を変える更新だ。UIそのものがモデルの出口になる設計は、他社の追従にも影響しそうだ。一方、WIREDは「The New ChatGPT Is More Show Than Tell(新しいChatGPTは語るより見せる)」と題して、派手な出力と情報の質がどう両立するかに疑問を呈している。可視化が読みやすさを上げるか、注意力を散らせるかは、これからの利用で確かめていくほかない。
Claude Haiku 5.5は最大90%値下げ──ただし新トークナイザーに注意
Anthropicの小型モデル「Claude Haiku 5.5」が10月7日に投入され、AWSはAmazon BedrockおよびClaude Platform on AWSでの利用を即日可能にした。AWSの公式ブログによると、Haiku 5.5はClaude 5.5ファミリーで最速・最も効率的なモデルで、サブエージェントや大量処理・コスト感度の高いワークロード向けに設計され、大部分のタスクでHaiku 4.5比約75%のコスト低減を実現するという。
The Decoderのまとめでは、コンピュータ使用のベンチマーク「OSWorld」でスコアが15.7%から72.4%へ大幅に向上し、トークン単価は最大90%下がる。ただし落とし穴もある。新トークナイザーはタスクあたりのトークン消費を増やすため、額面の値下げ幅は実質いくらか割り引いて考える必要がある。AIの価格競争はまだ終わっていない、という同メディアの見立てはもっともだろう。
NVIDIAとMicrosoftが「RTX Spark」──エージェントが住むWindows PC
サンフランシスコで開かれたMicrosoftの「Windows AI and Surface」イベントで、NVIDIAのJensen Huang CEOとMicrosoftのSatya Nadella CEOが共演し、両社がエージェント時代のWindows PC向けにハードウェアとソフトウェアを共同設計していると示した。イベントでは、エージェントをOSの制御下で安全かつ永続的にバックグラウンド実行するための基盤「Microsoft Execution Containers(MXC)」の一般提供開始も発表された。Microsoftの説明では、エージェントをセキュアにし、観察し、統制するプリミティブをWindowsに直接組み込むもので、Nadella氏は「デスクトップをエージェントにとって最も安全な実行場所にする必要があった」と述べている。
その最初の具現化が、NVIDIA製プロセッサ「RTX Spark」を搭載するノートPC「Surface Laptop Ultra」だ。Microsoftはスペックと価格を発表し、ITmediaが日本時間10月8日、51万3,480円から予約受付を開始したと伝えた。AIモデルとエージェントを動かすために設計されたPCという位置づけで、Huang氏は「エージェントの時代、あなたのコンピュータ上のエージェントは個人アシスタントになる」と語った。
「decision model」の一日──OpenAIのDecisions API、LiquidAIのオープンd1
複雑な評価をyes/no・カテゴリ選択・段階評価に落とし込む「decision model」カテゴリで、10月7日は大きな一日だった。OpenAIはDecisions APIをパブリックベータとして公開した。The Decoderによると、テキストと画像の分類をResponses API比で約10倍高速に処理し、入力100万トークンあたり0.10ドル。あわせて有料APIティアを5段階から3段階へ整理したという。
オープンソース側も動いた。LiquidAIはマルチモーダルなオープンのd1シリーズ(d1-3B、d1-omniなど)をエッジ向けに公開した。600Mのomni-d1をWebGPUでブラウザ実行するデモも登場し、コメントフィードのモデレーション(有害か、スパムか等の判定)をローカルでリアルタイムに処理する様子が示されている。今月初めにAmazon「Strands Decider 2B」やCloudflare「Clef」、Perplexity「Decider 27B」が相次いだ流れが、プロプライエタリとオープンの両側で一気に加速した格好だ。
日本語圏でも早速検証が進んでいる。Zennにカンリーの萩野氏が、JevやClefと同じ7タスク・3,800件を使ってDecisions API(GPT-6 Luna使用)を比較した記事を投稿。主要指標は7タスクすべてでJevが上回った一方、幻覚検出を「実際に何件止めたか」で見るとDecisions APIにも良い結果が出たという。Simon Willisonもllm-openai-decisionsプラグインを公開しており、開発者エコシステムへの組み込みが始まっている。
GoogleのSynthID検証サイト──1,800億件の水印、ただし対応は「SynthIDのみ」
Googleは10月7日、画像・動画・音声がAI生成かどうかを誰でも確認できるSynthID検証サイトを公開した。The Decoderによると、SynthIDの水印(ウォーターマーク)が付与されたコンテンツはすでに1,800億件以上に達し、Google自身の生成AIに加え、OpenAIやNVIDIAなどパートナーのコンテンツも検出対象という。ただし重要な限定がある。検出できるのはあくまでSynthIDのタグが付いたコンテンツだけで、AI生成メディア全般を判定する仕組みではない点だ。10月5日のOpenAIによるEU向け不可視透かしの発表と並び、透明性のインフラが実用段階に入りつつある一方、その適用範囲の限界も明確に見えた形だ。
AIガジェットの分岐点──MuseはiPadへ、iPodの父は「信頼」を説く
MetaのAIエージェント「Muse」がiPadに対応した。モバイル版の登場からわずか1ヶ月での展開で、TechCrunchは同社がアシスタントの提供範囲と統合を急拡大していると伝えている。先日紹介した、Muse搭載ガジェットの自作コードをOSSとして公開した動きと合わせると、MetaがAIデバイス層の生態系を広げようとする意図がうかがえる。
同じ日のTechCrunchには、iPodの開発を率いたTony Fadell氏へのインタビューも掲載された。同氏は初世代のAIガジェットについて「実際の問題を解決できていなかった」と失敗の要因を指摘し、次の波は消費者の信頼を獲得しなければならないと語った。専用デバイスの失敗と汎用アシスタントの拡張という二つの方向が交差する今、AIハードウェアの勝ち筋がどこにあるのかは依然として流動的だ。
そのほかの動き
- Nous Researchが評価額15億ドルへの到達を確定し、9,000万ドルのシリーズBを調達したとTechCrunchが伝えた。エージェント「Hermes」の開発元で、ビジネスユーザー向けAIエージェントの提供も始めている。
- Zuckerberg夫妻が支援するBiohubが18億ドル規模の取り組みを主導しているとThe Decoderが報じた。細胞の挙動を予測するAIモデルの訓練を目指し、Meta、Google DeepMind、Isomorphic Labs、米エネルギー省がデータ・設備・計算資源を提供。最初のデータセットは約1年後に整備される見通し。
- McDonald'sが、フランチャイズ店舗への価格を推奨するAIツールをめぐり、米国内のフランチャイズ事業者から提訴されたとAPが報じた。
- 前回紹介したChatGPTの10代向け機能への独立監査の続報として、新しいテストでも精神健康の危機にある10代との会話をチャットボットが促し続け、AIとの不健全な関係を助長しうるとの結果がTechCrunchに報じられた。
