OpenAIは10月5日、ChatGPTに新しいビジュアル広告フォーマットを導入し、広告主向けの計測ツールやアトリビューション提携、ブランド適合性の取り組みを拡大すると発表した。利用者の反感が強まるさなかの収益化強化であり、同じ日にMIT Technology Reviewが「人はAIを嫌っているのに、なぜ手放せないのか」という分析記事を公開したのは象徴的だ。規制の面ではノルウェーが一部の公共の場でのAIグラスの一時禁止を提案する見通しを報じられた。韓国では銀行6行へのサイバー攻撃で2万5000人超の個人情報が流出し、2行がAIエージェントによる攻撃と推定している。国内では東芝がAI時代の「データインフラ」需要を見込んでニアラインHDDの生産ラインを増強した。

OpenAI、ChatGPTに新しいビジュアル広告フォーマット

OpenAIは10月5日、ChatGPT向けの新しいビジュアル広告フォーマットを導入すると発表した。あわせて計測ツールの拡張、アトリビューション(広告効果の帰属測定)に関する提携、ブランド適合性の確保といった広告主向けの施策も広げるという。

収集時点で公表されている要約では、配信開始時期や掲載位置などの詳細には触れられていない。対話型UIでの広告が従来のバナー広告と同じ形で成立するかは未知数なだけに、実際にどんな見た目で提示されるのか、今後の公式発表を確認したい。

「AIが嫌い」なのに手放せない──MIT Technology Reviewが分析

MIT Technology Reviewが10月5日に公開した分析記事「People really hate AI, so why can't they get enough?」が、いまの世相を鋭く言い当てている。

記事がまとめる調査数字は、そろって「矛盾」を示す。Pew Research Centerの調査では、AIが自分や社会にマイナスの影響を与えると予想する米国の成人が、プラスと予想する人を上回り、悲観は特に若い世代で強い。Stanford大学のAI Index報告書では、世界の半数以上がAI製品・サービスを「神経质にさせる」と答えた。Gallupの5月の調査では、自分の地域への新しいAIデータセンター建設に反対する米国の成人は71%に達し、新しい原子力発電所への反対(53%)を大きく上回った。3月のNBCの世論調査では、AIは米国移民・税関執行局(ICE)よりも人気が低かったという。

その一方で、利用は伸び続けている。市場分析企業Sensor Towerによれば、ChatGPTの月間ユーザーは5月に10億人へ到達。Google DeepMindのGeminiも7月時点で9億5000万人という。Pewの調査では米国成人の半数がチャットボットを利用しており、これは2023年の2倍以上で、4人に1人は毎日使っている。OECD加盟38カ国では、成人の3分の1以上が直近3ヶ月以内に生成AIツールを使ったと回答した。

嫌っている人と使っている人が別の集団なのかといえば、おそらくそうではない。記事の筆者は、両方の円がほぼ重なりつつあると指摘する。利用が最も進んだグローバルノースほど悲観的で、利用率の低いグローバルサウスでは楽観的という相関も示されている。筆者の見立ては、人々が嫌っているのは技術そのものではなく、それをあらゆる形で押し付けてくる企業の執拗さだ、というものだ。

ソーシャルメディアでも同じ構図が20年にわたって繰り返された。ただしAIには、今回もまだ打つ手が残されていると記事は続ける。米50州すべてがAIの開発・利用を規制する法律を可決または提案しており、関連法案は2,100本超と3年間で10倍に増加。さらにGoogle・OpenAI・Anthropicに対抗する有力なオープンソース替代がすでに市場にある以上、消費者の選択肢が市場圧力を生む可能性も残されているという。

MIT専門家委員会「AIが大学経験を蝕んでいる」

同じMITからは、教育の現場への警告も出ている。MITの専門家委員会がまとめた報告を、The Decoderが10月5日に伝えた。

それによると、AIは大学生活の根幹部分を蝕いつつあるという。教授室を訪ねるオフィスアワー、学習グループ、そして学部生向けのフラッグシップ研究プログラムがいずれも衰退傾向にあり、教員と学生の間の信頼は崩れつつある。さらには、研究アシスタントとして学生ではなくAIエージェントを検討する教授も出てきているという。

AIの起源の物語に最も深く結びつく大学が、高等教育の全面的な見直しを求めるに至った。「利用は手放せない、でも信頼は崩れている」という前述のパラドックスが、キャンパスの内側で具体的な形で顕在化したといえそうだ。

ノルウェー、公共の場でのAIグラスに「一時禁止」を提案へ

Reutersが10月5日に報じたところによると、ノルウェーは一部の公共の場におけるAIグラスの一時的な禁止を提案する見通しだという。

対象となる場所の範囲や禁止の期間、違反時の扱いといった詳細は、収集時点では確認できていない。カメラで常時撮影しAIで解析するデバイス特性に対する懸念が背景にあるとみられるが、正式な提案内容が公表された段階で、欧州のAI規制議論の潮流の中でどう位置づけられるかを見ていきたい。

韓国の銀行6行にサイバー攻撃──2万5000人超流出、AIエージェント活用の可能性も

韓国では9月末から銀行へのサイバー攻撃が相次いだ。現地紙の報道として、ITmediaが10月5日に伝えたところでは、攻撃を受けたのは銀行6行で、新韓銀行など4行から計2万5000人超の個人情報が流出したという。さらに攻撃を受けた銀行のうち2行は、AIエージェントを使った攻撃と推定しているとしている。

偵察から侵入、情報持ち出しまでを自動化するエージェントが実戦で使われた可能性を示唆する報道で、攻撃側の「AI化」が金融インフラの防衛にも影響を与えかねない事例として注目される。現地報道として伝えられた範囲では攻撃手法の詳細は明らかになっておらず、韓国側の調査結果を待ちたい。

東芝、ニアラインHDDの生産ラインを増強──AI時代は「データインフラ」需要

東芝グループでHDD製造を担う東芝デバイス&ストレージは、大容量ストレージ「ニアラインHDD」の生産ラインを増強したと発表した(ITmedia、10月5日)。

生成AIの学習や運用には膨大なデータの保管が伴い、データセンターを支えるストレージ需要の拡大が見込まれる。ニアラインHDDは一般的に、頻繁なアクセスこそ少ないが大量のデータを低コストで保持する用途に使われる製品群で、同社はAI時代の「データインフラ」需要の受け皿として生産能力を厚くする。SSDへの置き換えが進む声が強い時代に「なぜ今HDDなのか」という問いに、需要の在り処で答える形だ。

そのほか気になった話題

  • Aleph Alpha「Kolibri 78B」を無料で試せるサイトが話題に: Redditのr/LocalLLaMAコミュニティで、ドイツAleph Alphaのモデル「Kolibri 78B」をブラウザから無料で試せるWebサイトが紹介された。ヨーロッパ発のモデルを手軽に触れる入口として注目されている。
  • 財務チームは勤務時間の26%を「AI出力の検証」に: Datarailsの2026年CFO調査を伝える記事がHacker Newsで話題に。AIの成果物を人がチェックするコストが、導入効果を削り込んでいる実態が数字で示された。
  • AIエージェントがOSSのセキュリティ開示を撹乱: InfoQの記事「AI Agents Are Disrupting Open Source Security Disclosure」が共有された。AIエージェント経由の脆弱性報告の増加が、オープンソースのセキュリティ開示プロセスを圧迫しているという指摘。
  • AIが書いた物語を人は好むのか: ケンブリッジ大学出版が「Do people prefer stories written by AI?」と題する調査を紹介している。生成文章への評価が実際にどうなっているかを検証する内容で、教育・出版界隈で関心が集まりそうだ。