海外AIニュースから、注目すべきトピックを6つ取り上げます。今回はOpenAIとSynopsysによるチップ設計AIの共同開発、米FTCのAI各社への大規模調査、MetaのAIデータセンターをめぐる税務問題、ElevenLabsの評価額倍増、OpenAIによるモデル蒸留キャンペーンの妨害、そしてCoreWeaveによるNVIDIA次世代システムの本番稼働まで、開発・規制・インフラの三面から動きがありました。
OpenAIとSynopsysがチップ設計AI「GPT-Synopsys」を共同開発
OpenAIと半導体設計ソフトウェア大手のSynopsysが、チップ設計に特化したAIモデル「GPT-Synopsys」を共同開発していることが分かりました。The Decoderの報道によると、このモデルはSynopsysのEDA(電子設計自動化)ツールをベテランエンジニアのように操作し、設計の最適化を自ら行うことを想定しているといい、すでに半導体企業の顧客を対象とした早期テストが進められていると伝えられています。
チップ設計は高度な専門性が求められる領域で、生成AIの活用が進む中でも自律化が難しいとされてきました。AIがEDAツールを自在に扱えるようになれば、設計期間の短縮や人手不足の緩和につながる可能性があります。また、OpenAI自身が進める自社チップ開発にもこの提携の知見が活かされる可能性があると同メディアは指摘しています。
米FTCがOpenAI・AnthropicなどAI各社に大規模調査
米FTC(連邦取引委員会)が、OpenAIとAnthropic、その他の主要AIラボを対象に、消費者保護違反の疑いで正式な調査を開始したことが、The DecoderとThe Guardianの報道で分かりました。FTCは法的拘束力のある要求を通じて文書の提出や幹部の証言を求める方針とみられます。
報道によれば、調査は直近のHugging Faceへの侵入事件よりも前にすでに始まっており、FTCが以前から進めてきた「AIエージェントの行為に対する企業の責任」を問う取り組みを超える広範な内容とされています。消費者向けAIサービスが急拡大するなか、規制当局がどこに線引きをして責任を問うのかは、業界全体の運営方針に影響を与えそうです。
Meta、AIデータセンターを「実験」として税額控除──2025年は39億ドル規模
New York Timesの報道をThe Decoderが伝えたところによると、MetaはAIデータセンターを連邦税制上の「試験設備(パイロットモデル)」として、またNVIDIA製チップを「実験材料」として分類することで、多額の税額控除を受けているといいます。この手法による節税額は2025年だけで約39億ドルに上るとみられます。
根拠とされる税額控除は1981年にさかのぼる制度ですが、Meta自身の会計担当者もこの戦略には法的リスクがあると認識していると同紙は伝えています。さらに、現在「実験」として扱われているデータセンターについて、ザッカーバーグCEOは2025年1月に「コア製品とビジネスを推進する」と説明していたとされ、分類と実態の乖離が論点になりそうです。
ElevenLabsの評価額が220億ドルへ倍増──3億ドル規模の従業員テンダー
音声生成AIのElevenLabsが、評価額を2倍の220億ドルに引き上げる従業員向けテンダー(保有株の売却機会の提供)を実施したとTechCrunchが報じました。規模は3億ドルで、WellingtonとT. Rowe Priceが共同で主導したといいます。
AIボイスは合成音声の品質向上とともに、エンターテインメントからアクセシビリティ、多言語対応まで用途が広がっている領域です。評価額の短期間での倍増は、音声AI市場への投資家の期待の高さを示す材料といえそうです。
OpenAI、モデル推論を狙う協調的な蒸留キャンペーンを妨害
OpenAIは9月30日、保護されたモデルの推論(思考過程)を不正に抽出しようとする「協調的なモデル蒸留キャンペーン」を妨害したと公式ブログで報告しました。あわせて、敵対的な蒸留への防御を強化していくとしています。
モデル蒸留は、高性能モデルの出力を大量に収集して別モデルの学習に使う手法です。API経由での大量リクエストなどで競合がモデル能力を「複製」できれば、提供側の知的財産や投資対効果が損なわれる恐れがあります。フロンティアラボが推論の保護に本腰を入れ始めたことで、APIの利用条件や検知の仕組みが今後強化されていく可能性がありそうです。
CoreWeaveがNVIDIA「Vera Rubin NVL72」の提供を開始──Devinの推論で最大4.8倍
NVIDIAの公式ブログによると、AI特化クラウドのCoreWeaveは、サンフランシスコで開催中の自社イベント「CoreWeave Fully Connected」で、次世代システム「Vera Rubin NVL72」と大容量ネットワーク「Spectrum-X 102.4Tイーサネット」の提供開始を発表しました。AIコーディングエージェント「Devin」を開発するCognitionが、本番ワークロードで利用する最初の顧客となっています。
Cognitionは実際のソフトウェアエンジニアリング負荷(FrontierCodeのタスクをサンプリング)でベンチマークを行い、Vera Rubin NVL72がGB200 NVL72比で総トークスループット最大4.8倍を達成したと報告しています。この結果は、Devinのような長いコンテキストと高並行を扱うエージェント型ワークロードで、コストパフォーマンスの大幅改善につながる可能性を示唆します。またCoreWeaveは、AIエージェント向けに設計されたCPU「NVIDIA Vera」の提供や、モデルとエージェントの訓練・評価・改善をつなぐ環境「CoreWeave Forge」の開始も発表しています。
まとめ
チップ設計へのAI適用(OpenAI×Synopsys)、規制の本格化(FTC調査)、そしてエージェント時代のインフラ競争(Vera Rubin)と、AIを取り巻く環境が多層的に動く一日でした。FTC調査の対象範囲やGPT-Synopsysの実測性能など、詳細が判明する段階であらためて取り上げる予定です。
