2026年9月25日朝時点の海外AIニュースから、影響が大きそうなトピックをまとめる。対話AIが「顔」と「声」を手に入れて現実世界への出入口を広げる一方、計算基盤をどこにどう確保するのかという問いがさらに具体化した一日だった。

Gemini 3.8 Liveにリアルタイムアバター──対話AIが「顔」を持つ

Googleは、先週登場した対話モデル「Gemini 3.8 Live」の続報として「Gemini 3.8 Live with Live Avatar」を発表した。ほぼリアルタイムの映像生成と音声を組み合わせ、聞き・見て・話す、動的な視覚的なペルソナとの対話を実現する機能だ。

技術的なポイントは、精密なリップシンク、自然な表情、滑らかな対話の交代(ターンテイキング)。カスタマーサービスへの活用やインタラクティブな操作案内など、デジタル上のやり取りをより豊かでアクセシブルな体験に変えるとしている。提供は本日からGemini Enterpriseで始まっている。

音声対話はすでに実用段階に入っているが、そこに映像としての「相手」が加わる意味は小さくない。企業の受付や案内、教育の場面で、画面の向こうにいるのが誰かという体験そのものを設計し直す必要が出てくる。

Googleが「Call for Me」をテスト──Geminiが店舗に代わって電話をかける

もう一つのGoogleのニュースは、より現実に踏み込んでいる。同社は、Geminiがユーザーの代わりに店舗などへ電話をかける機能「Call for Me」のテストを開始した。まず米国のPixel 11ユーザーが対象で、Geminiの有料サブスクリプションへの加入が必要となる。

WIREDはこの機能を「ロボコールに新しい意味を与える」と表現した。予約や問い合わせはいまだに電話が事実上の標準であり、発信をAIに任せられる便利さは大きい。一方で、受ける側は「人間だと思って対応した相手がAI」という状況に晒されることになる。

ちょうど同じ日、音声AIのElevenLabsのCEOがTechCrunchのインタビューで「企業はAI音声での対応であることを顧客に伝えるべきだ」という見解を示している。AI同士、あるいはAI対人間の電話が増える前提で、開示のルールをどう設計するかは避けて通れない論点になりそうだ。

AnthropicはAkamaiと120億ドルのコンピューティング契約──「Claude Marketplace」も

Bloombergの報道によると、AnthropicはAkamaiと120億ドル規模のAIコンピューティング契約を結んだ。モデルを動かす計算資源の確保競争が、さらに大きな金額で動いた形だ。

あわせて注目されるのが、9月23日に公開された「Claude Marketplace」だ。Claude向けのプラグインやコネクタ、Claudeを組み込んだエージェントや製品、コンサルティングなどの専門サービスを一か所で探して購入できる。公開時点で2,000以上のコネクタ・プラグインが並び、企業はAnthropicとの契約で確約している利用額の一部を使って掲載製品を購入できるという。

計算基盤の拡大と、エコシステムの流通整備。モデル会社の競争が「モデルの性能」からその周辺へと広がっている。

Claudeの酵素発見、「ありふれたゲノムマイニング」との見方も

前回のまとめで伝えた「Claudeによる未知の酵素系ARTの発見」について、研究者側の評価が報じられた。The Decoderによると、Anthropicは「ClaudeがDNAデータベースの中から未知の酵素系を見つけ、解析の大半を自らこなした」と主張する一方、CRISPR研究者らはこれを「ありふれたゲノムマイニングに過ぎない」と見ているという。

おさらいすると、発見されたのはバクテリオファージの中の「ART(array-associated reverse transcriptases)」と名付けられた酵素系で、CRISPRに似たDNAの反復配列を伴う。探索は多数のClaudeエージェントが並列で自律的に進められ、CRISPR研究で知られるMITのFeng Zhang氏も検証側に名を連ねている。

「AIが科学を発見した」という主張が、既存の方法論とどこまで違うのか。宣伝と実態の距離を測る好例として、独立した検証の結果が注目される。

Sakana AIがSchmidhuber氏を迎え「RSI Lab」──再帰的自己改善へ

東京のSakana AIは、Jürgen Schmidhuber氏を首席科学アドバイザーに迎えたと伝えられた。Sakana AIは深層学習と世界モデルの考案者とされる彼を「現代AIの父」と呼び、新設する「RSI Lab」の主導を任せる。RSIはrecursive self-improvement(再帰的自己改善)、つまりAIが自分自身を開発し続ける仕組みの研究で、1990年代のSchmidhuber氏のアイデアは同社の「Darwin Gödel Machine」などのプロジェクトにすでに影響を与えているという。

AI研究の黎明期から理論を築いてきた人物が、日本企業のラボで自己改善AIに取り組む。研究の方向性としても、人材の流れとしても興味深い人事だ。

Stargateに不可抗力通知、GoogleのAI衛星は10月1日──データセンターの攻防

計算基盤をめぐる問題は、物理的な供給側にも出てきた。Oracleは、ニューメキシコ州で進めるStargateデータセンターについて不可抗力(フォースマジュール)通知を送った。通知が有効になれば、施設が2028年の稼働目標に間に合わない場合に支払いを遅らせることができるという。

一方、極端な解を探る動きもある。Googleの「Suncatcher」プロジェクトは、太陽光で動く軌道上のAIインフラを目指すもので、冷蔵庫サイズの実験衛星が10月1日にSpaceXのFalcon 9で打ち上げられる予定だ。ただし課題は厳しく、地上の1ギガワット級データセンター1棟に匹敵するには約1万基の衛星が必要とされ、AmazonのJeff Bezos氏は軌道データセンターがコストで地上を上回るまで20年かかるとみているという。

約束された計算容量が期日どおりに届く保証はもうない。AI企業の体力がこうしたインフラの遅延リスクをどこまで吸収できるかも、今後の競争の焦点になりそうだ。