9月18日のAIニュースから、AI開発ペースをめぐる論争に大手企業の側から応答が相次いだ一日を中心にまとめる。Amazonが「進歩と安全の二択ではない」との方針を示し、PalantirのKarp CEOは「自己責任」論を展開。その一方でWaymoは2028年のシンガポール展開を発表するなど、開発と事業拡大は着実に前進している。オープンソース界隈では、中国電信がAscend NPUだけで全訓練した29BのMoEモデルを公開し、llama.cppのAMD最適化フォークも注目を集めた。

減速論争に企業の声──Amazon「準備ができてから」、Palantirは「自己責任」

安全上の問題が相次いだことを受けて大手ラボの経営者が開発減速を訴える動きが広がる中、Amazonが初めて明確に立ち位置を示した。同社の報道担当者は「進歩と安全のどちらかを選ぶ問題とは見ていない。モデルは厳格なテストと強固な保護策を経て、準備が整い安全に使える状態になってからリリースされるべきだ」とコメントし、安全性の侵害が続けば業界全体にリスクが及ぶとの認識も示した。

これに対しPalantirのAlex Karp CEOは、CNBCのインタビューで「第一の防衛線は、開発者自身が自分の行動に責任を負うことだ」と述べ、政府による規制ではなく事業者の自己責任を強調した。AnthropicのDario Amodei CEOらが業界全体での減速を呼びかける中、規制と責任の所在をめぐる論点がくっきりと分かれ始めた形だ。

同時にBloombergは、こうした「実存的な恐怖」がAI論争そのものを形作りつつある現状を分析している。最近のインシデントを人間の制御を離れた兆候と受け止める声がある一方、そうした煽情的な言説が、現実の影響への企業責任を問う機会をむしろ奪っているという反論もあり、専門家の間でも温度差が際立っている。

Waymo、2028年にシンガポールで有料ロボタクシへ

Alphabet傘下のWaymoは、2028年にシンガポールでロボタクシの有料サービスを開始する計画を明らかにした。今後数カ月以内にジャガーI-PACE電動車のフリートを同国に投入し、来年からは訓練されたスペシャリストが手動運転でシンガポールの道路やモンスーンの気象パターンを学習・マッピングするという。国内および国際展開を続ける同社にとって、東南アジア市場は新たな一里塚になりそうだ。

米中首脳会談、AI対立が主要議題に

来週開催されるトランプ米大統領と習近平国家主席の会談では、AI、泥沼化する貿易戦争、人民元が主要議題になるとみられている。両国が競争の核心分野で譲歩や「ガードレール」を設定できるかが焦点で、市場は現時点では混合したシグナルを送っているという。

中国電信の「Xing4.0-29B-A4B」──Ascend NPUだけで全訓練した29B MoE

中国電信のAI技術子会社が開発した次世代モデル「Xing4.0-29B-A4B」がHugging Faceのトレンド入りした。総パラメータ29B・トークンあたり4B活性のMoE構造で、ネイティブで256Kトークン(512Kへ拡張可能)のコンテキスト長をサポートする。注目はその訓練環境で、Ascend 910Cクラスタ上のMindSporeフレームワークだけで訓練したこの規模のモデルは初めてとされる。細粒度のMoE通信最適化や選択的再計算などの多層的な最適化により、訓練スループットを素の状態から約96%改善したという。

ベンチマークではSWE-bench Verifiedで75.0%(比較対象のGemma4-26B-A4Bは53.0%)、Terminal-Bench 2.1でも57.5%と、エージェント系のタスクで優位を示す結果が出ている。vLLM・SGLang・KTransformersでの推論に加え、OpenCodeやClaude Codeなどのエージェントフレームワーク向けの適応も打ち出しており、「エージェント向けアーキテクチャ」(mHC + MLA + MTP)を前面に掲げている点が特徴だ。

llama.cppのRDNA3最適化フォーク──Radeon 7900 XTX×2で82トークン/秒

ローカルLLMコミュニティでは、AMDのRadeon 7900 XTX 2枚構成に特化したllama.cppの最適化フォークが話題になっている。Redditのr/LocalLLaMAに投稿された報告によると、Qwen 3.8のQ8量子化モデルのデコード速度が、標準のllama.cpp+Vulkanの約28トークン/秒から約82トークン/秒へと約3倍に向上したという。コンシューマー向けAMD GPUで実用速度が出ることの証明として注目を集めており、今後のさらなる改善への期待がコメント欄で膨らんでいる。

論文ピックアップ: コーディングエージェントの「ハーネス設計」の何が効くのか

Hugging Faceのデイリーペーパーズからは、コーディングエージェントの土台となる「ハーネス」(計画・ツール利用・コンテキスト管理の枠組み)の設計を体系的に検証した実証研究を紹介したい。多くの評価は完成したエージェントシステム同士を比べるため、どの部品がどれだけ効いているのかを分離できていない。この研究では実行ループを固定したモジュール式ハーネスを構築し、計画・ツールインターフェース・コンテキスト管理を変えながら176通りの実験設定で4モデルをSWE-Bench Verifiedなどで評価。「どの成分が、いつ効くのか」に初めて定量的な輪郭を与える試みとして、エージェント設計の参考になりそうだ。