9月9日の海外AIニュースから、画像生成モデルの刷新、音楽AIの著作権対応、インフラ投資、そしてコンシューマーGPUで巨大モデルを動かす挑戦までをまとめて紹介する。
OpenAIが画像生成を2モデル体制へ──「ChatGPT Images 2.5」
OpenAIは画像生成機能「ChatGPT Images 2.5」をリリースし、2つの新しい画像モデルを投入した。役割分担が明確で、「Flare」は高速な生成を、「Sunburst」はより精密な編集をそれぞれ担当する。
気になるのは提供方法だ。どのChatGPTユーザーがどちらのモデルを使えるのか、またいつ切り替わるのかは現時点ではっきりしていない。The Decoderが独自テストを行い、誰が改善の恩恵を実際に受けられるのかについて最初の手がかりを得たとしている。画像生成の使い勝手がプランや場面によって変わってくる可能性があり、今後の公式な整理を待ちたい。
Suno v6は「ライセンス済み音楽」だけで訓練──著作権訴訟対応の転換点
AI音楽生成のSunoが新モデル「Suno v6」を発表した。注目は訓練データで、同社によれば従来バージョンの訓練に使っていた音楽を使わず、ライセンスを取得した楽曲で訓練したという。
同社は現在、レコード会社などから複数の著作権訴訟を抱えている。生成AIとコンテンツ権利の対立は画像・テキストに続いて音楽でも本格化しており、「訓練データをどこまで権利クリアなものに切り替えられるか」は事業継続の鍵になる。訴訟係争中のモデル差し替えがどこまで評価されるかは不明だが、ライセンス済みデータでの訓練を前面に出す方針転換は、業界全体の方向性を占う上で意味が大きい。
Hugging Faceの「ML Intern」──チャットだけで機械学習実験
Hugging Faceは、自社チャットボットに組み込んだAIアシスタント「ML Intern」を公開した。機械学習の専門知識がなくても、チャットでの対話だけでML実験を実行できるという。
同社はもともとモデルやデータセットの共有基盤を持ち、NVIDIAによる買収の発表(今月初めに当ブログでも伝えた)でも話題になった。「実験の実行」という実際に手を動かす段階までチャット経由で担えるようになれば、機械学習の参入障壁は大きく下がる可能性がある。ただし生成された実験の妥当性を利用者が判断できるかという課題は残る。
Google、フィンランドに130億ユーロのAIインフラ投資──原子力調達も
GoogleはフィンランドのAIインフラに対し、約130億ユーロ(約150億ドル)の投資を発表した。Reutersによれば、AIデータセンターへの投資に加えて原子力の購入も含まれるという。
北欧は冷涼な気候と豊富な電力でデータセンター立地としての魅力が高く、今回の投資もその流れにある。生成AIの計算需要が電力需要を急激に押し上げる中、データセンターと原子力の組み合わせは米国企業の間で標準的な選択肢になりつつある。ヨーロッパでのAIインフラ競争がさらに激化しそうだ。
QualcommがAWS向けチップ設計、その設計にはAWS Bedrockを使う
半導体とクラウドの相互依存が深まっている。QualcommはAWS向けに複数の製品世代にわたるカスタムチップの設計を手がけており、特にAI推論に注力している。
興味深いのは逆方向で、Qualcomm自身がチップ設計にAWS Bedrockを利用しているという。クラウド事業者がAI推論のために専用チップを発注し、そのチップ設計を自らのAIサービスで支援する──この循環は、AIが半導体開発そのものに組み込まれている好例だ。推論専用チップの多様化は、GPU依存の緩和という観点からも注目される。
RTX 3090×10台で285B MoEを動かす──DeepSeek V4-Flash-Vision実験
ローカルLLMコミュニティでは、コンシューマーGPUで巨大モデルを動かす試みがまた一歩進んだ。Redditのr/LocalLLaMAで報告された取り組みでは、「DeepSeek-V4-Flash-Vision-Exp」(285BのMoE、FP4エキスパート+FP8アテンション、ウェイトで約157GB)を、RTX 3090を10〜12枚搭載した自作マシンで実行している。
結果は、240Wの電力制限下で10枚構成(TP2×PP5)なら毎秒60トークン超、12枚構成(TP4×PP3)なら毎秒120トークン超の生成速度。ビジョン入力、speculative decoding(DSpark、k=3)、ツール呼び出しがすべて動作し、コンテキスト長はオフロードなしで100万トークン、RAMオフロード時は400万トークンまで扱えるという。使用したvLLMビルドのDockerイメージとリポジトリも公開されており、再現可能な形に整理されている。
フラッグシップ級の大規模モデルが、データセンターではなく自宅のマシンで実用速度に届きつつある。量子化とMoEの組み合わせが「ローカルでどこまで動くか」の限界を押し広げている。
まとめ
今日のニュースは「生成AIの供給側が成熟段階に入った」ことを示す内容が多かった。画像生成は高速・高精度の2モデルに役割分割し、音楽AIは権利クリアな訓練データへ移行し、インフラ投資は電力の調達方法から再設計されている。そしてローカルでは、285BクラスのモデルがゲーミングGPUの群れで回り始めた。ますます速くなる流通と、それを支える土壌の両方が動いている。
