9月9日夜時点の収集データは研究系の公開情報が中心でした。深度推定のMarigold V2とロボット学習のOpenWAMという2本の発表に加え、DeepSeek V4 Proをめぐるコミュニティの報告と、OpenAI関係者のデータ活用に関する発言をピックアップして整理します。
Marigold V2 ── 拡散トランスフォーマーで深度推定を刷新
単眼深度推定モデル「Marigold」の第2世代となるMarigold V2が、Hugging Face Daily Papersで公開されました。SIGGRAPH Asia 2026での採録が予定されているとのことで、コードや重みを含む成果物は公開済みです。
Marigoldの出発点は、画像生成モデルを事後学習して深度推定器に転用するというアプローチでした。V2ではバックボーンを拡散トランスフォーマー(DiT)に刷新し、推論が単一ステップで済む設計になっています。エッジの鮮明さと多彩なタスクへの汎用性が向上したと説明されています。
注目はその訓練レシピです。大型の事前学習済みDiT(Qwen-Image-Edit-2509)を4bitに量子化し、ランク128のQLoRAを組み合わせることで、32GBの消費者向けGPU1枚でファインチューニングが完結します。数時間で妥当な精度に達し、数日で完成するとのことで、80GB級のカードや8枚束の環境を必要としない「小さい研究室でも再現できる」設計がうたわれています。推論時も2K解像度でメモリ不足にはならないとされています。
技術面では2つの工夫が紹介されています。ひとつは正解深度をDINOv3に通してDiTの特徴と整列する「iREPA-depth」、もうひとつはノイズを含む合成正解データに耐えるための損失「SinkLoss」です。SinkLossは画素同士の1対1対応を要求せず、画像を5×5のタイルに分割して予測深度と正解深度をSinkhornマッチングでソフトに対応づけ、その輸送コストを損失として使います。
評価では、同程度の学習データで訓練された既存モデルをNYUv2・KITTI・ETH3D・ScanNet・DIODEの各ベンチマークで上回るとされています。同じレシピは法線やアルベドにも適用でき、窓越しに被写体が見える「透過深度」や、スパースなlidar点から埋めるメトリック深度補完(テスト時に小さなLoRAを当てはめるだけ)といった派生タスクもデモされています。
OpenWAM ── 「世界と行動」を一体で学ぶモデルの公開基盤
同じくHugging Face Daily Papersで、World-Action Model(WAM)の体系的な事前学習を目指す「OpenWAM」が公開されました。
WAMは、環境の状態遷移を学ぶ世界モデルと行動の選択を単一のモデルで兼ねる方向性を指す言葉で、ロボットやエージェントの基盤モデルとして注目されています。OpenWAMはこの設計空間を3つの構成で切り分けました。設計空間を組み合わせ可能なモジュールに分解し、8つのシミュレーションベンチマークで訓練・推論・展開・評価を統一する「OpenWAM-Infra」、制御実験を通じて「どの上流知識を継承するか」「世界と行動の学習シナジーをどう作るか」「そのシナジーはどうスケールするか」の3問に答える「OpenWAM-Study」、そして得られた知見をもとに実際に事前学習した「OpenWAM-α」です。
OpenWAM-αは、約6,400時間(5.185億フレーム)の一人称視点の人間・ロボットデータで事前学習されています。結果としては、5つの身体性にわたる8つのシミュレーションベンチマークでトップ層の性能を示し、モバイル双腕のベンチマークEBenchではSOTA。実世界の双腕ロボットで競うRoboDojo-Realリーダーボードでは1位となり、成功率的にはπ0.5の2倍と報告されています。単腕や器用ハンドの実機でも、代表的なWAM・VLA系のベースラインを一貫して上回るとのことです。
インフラのコードと、学習済み・事後学習済みの重みが完全公開されており、再現可能なベースラインとしての位置づけが明確です。
DeepSeek V4 Proは「ソフトリタイア」? ── Redditで報告
RedditのLocalLLaMAコミュニティで「DeepSeek Has Soft Retired Deepseek V4 Pro」という投稿が話題になっています。投稿はスクリーンショットを根拠にしており、公式な発表や技術的な詳細は現時点では確認できていません。
「ソフトリタイア」は、明確な告知なく提供が縮小されたり引き上げられたりする状態を指すコミュニティ側の表現です。DeepSeekはこれまでもモデルの提供形態を段階的に整理してきた経緯があり、今回の報告が何を意味するかは公式情報を待つ必要があります。断定できる材料が揃っていない点は割り引いて読みたいところです。
OpenAIのマーク・チェン氏、ChatGPTの学習データ活用を明言
OpenAIのマーク・チェン氏がXへの投稿で、ChatGPTの改善にユーザーからのフィードバックと非識別化(de-identified)したデータを使っていることを認め、「どのLLM企業も同じだ」と続けたことが話題になっています。
投稿自体は簡潔なものですが、学習データへのユーザーデータ利用は各国で規制や利用規約の焦点になっているテーマだけに、関係者が率直に認める形の発言としては注目に値します。非識別化の具体的な処理方法や対象範囲については、現時点では詳細が語られていません。
まとめ
研究系では、大規模GPUを持たない研究室でも追いかけられるMarigold V2と、完全公開のOpenWAMという、再現性を重視する2本が並びました。一方でDeepSeek V4 Proをめぐる報告は公式情報がなく、OpenAIの発言も詳細は限定的と、確度の異なる情報が混在する一日でもありました。
