本日(2026年9月3日)整理のAIニュースから、AI学習と著作権をめぐる米司法省の意見陳述、GoogleのGemini 3.8 Flashとサイバー防御向け新プログラム、OpenAIの新推論技術への懸念、NYCの学校AI禁止、そして国内では鹿嶋市のClaude活用やLLM乗り換えの実測レポートまで、6つのトピックをまとめます。

米司法省、NYT訴訟で「AI学習はフェアユース」──OpenAI支持に回る

ニューヨーク・タイムズ(NYT)らによるOpenAIへの集団訴訟で、米司法省(DOJ)が「著作権で保護されたテキストによるAIモデルの学習はフェアユース(公正利用)に当たる」とする意見陳述を提出したことが、TechCrunch、The Decoder、WIREDなど複数の媒体で報じられました。

意見陳述書は「米国には、AIの利用に関する実践と手続きのグローバルスタンダードを定める、堅牢で競争力のあるAI産業を発展させ続けることへの強い利害がある」としており、著作権者の許諾を得ずに学習するOpenAI側の立場を事実上サポートする形です。

注目すべきは、この主張が米著作権局自身の報告書と正面から矛盾している点です。The Decoderの報道によると、同局は学習データと著作権に関する報告書を公表しており、その直後に局長がトランプ政権によって解任されていました。政府内でも立場が割れる中、司法省が法廷で「フェアユース」を明言したことで、AI業界をめぐる最大の法廷バトルの構図がさらに複雑になっています。

日本でも生成AIと著作権の議論は続いていますが、米国のこの判決の行方は学習データの扱いの世界的な基準に影響を与えかねず、今後も注視が必要です。

Gemini 3.8 Flash発表──サイバー防御向け「Flash Cyber」とFairwind Programも

Google DeepMindは9月2日、Gemini 3.8 Flashと、サイバーセキュリティ特化版のGemini 3.8 Flash Cyberの2モデルを発表しました。公式ブログによると、3.8 Flashは「最も知的なワークホースモデル」を自称し、ソフトウェアエンジニアリング、エージェントタスク、専門領域の多段階推論で3.7 Flashから大幅な改善を果たしたといいます。価格は3.7 Flashと同じ100万入力トークンあたり0.75ドル、100万出力トークンあたり3.75ドル。

ただしThe Decoderは、一部のエージェントコーディングベンチマークではClaude Opus 5に匹敵するものの、「より熱心に考える」推論スタイルのせいでタスクあたりの出力トークンが約30%増え、実運用コストでは割高になりうると指摘しています。

より興味深いのはFlash Cyberです。脆弱性の検出と自動パッチ適用でフロンティアモデル級の性能を持つとされ、新設の「Fairwind Program」経由で、政府機関や信頼されたGoogle Cloud顧客、サイバーセキュリティパートナーといった「防御者」に限定提供されます。Googleは攻撃者ではなく防御者側に先端モデルを配る構えを明確にしていて、公式ブログでは「重要インフラ、公共サービス、国家安全保障を自律的に守る」と説明しています。

前回も伝えた通り、Flashシリーズは6週間で3本目という異例のペースで、フロンティア(最上位)モデルの後継はまだ登場していません。低価格帯での実用性能を積み上げる戦略が続いています。

OpenAIの新推論技術「recurrent depth」に安全性専門家の懸念

TechCrunchは、OpenAIの新モデルAstraが採用する「recurrent depth(反復的深さ)」という推論技術が、AI安全性の専門家の間で警戒感を引き起こしていると報じています。

この技術は、多くの推論モデルを特徴づける「逐次的な思考」の外側でモデルを動作させられるといいます。前回、Astraがサイバー攻撃への利用で「臨界」能力を持つ初のモデルとして報じられたことに続いて、今度はモデルの内部構造に近い部分での議論が浮上した形です。

情報は現時点で報道ベースのもので、技術的な詳細は今後の論文や公式資料を待つ必要がありますが、推論の仕組みそのものが変わろうとしている中で、安全性の検証フレームも合わせて進化できるかが問われそうです。

NYC、公立校のAI利用を1年禁止──Mamdani市長の方針

ニューヨーク市のMamdani市長が、同市公立校の大部分の生徒に対してAI利用を1年間禁止する方針を打ち出したと、ReutersとNew York Timesが報じています。

市長就任後、注目度の高い政策の一つとして扱われており、教育現場でのAIの役割をどう線引きするかという議論の最先端の事例になりそうです。米国では学校でのAI利用を逆に推進する州や学区もあり、対応が二極化しています。

鹿嶋市、公式Webサイト×Claudeで市民対応を改善──Claude Codeでの内製化も

国内の動きから。ITmedia AI+の取材記事で、茨城県鹿嶋市が公式WebサイトとClaudeを組み合わせた市民対応の改善に乗り出した事例が紹介されています。

限られた職員数で行政サービスを維持するという課題に対し、まずは公式サイトの情報をClaudeに読み込ませて市民からの問い合わせ対応業務を改善。さらにClaude Codeを使ったシステム内製化にも着手しているといいます。自治体における生成AIの「公式サイト+LLM」という組み合わせは、人手不足に悩む地方公共団体にとって参考になる構成です。

安いLLMへの移行で業務プロンプト15本中9本が壊れた──Zennの実測

Zennで公開された検証記事が興味深い結果を出しています。自治体や企業が実際に公開している日本語の業務プロンプト15本を、ClaudeやGPTからDeepSeek・Qwen・GLMなどの安いLLMに移し替えたところ、9本が壊れたといいます。

しかも壊れ方が厄介で、エラーは一切出ないとのこと。JSONがコードフェンスに包まれて後続処理が止まる、15問と指定したFAQが76問になる、規則の1文だけ抜ける──といった「静かな破壊」が起きるため、気づくのは現場からのクレーム後になってしまうといいます。

前回のコスト比較(1〜2桁のコスト削減見込み)を踏まえた続編で、コスト削減の可能性と移行リスクの両面を実データで示した点が価値高いレポートです。モデル乗り換えを検討している組織にとって、移行時には出力形式の検証を自動化する仕組みが必須になる、という教訓が読み取れます。