8月5日のAIニュースで最も目を引いたのは、最先端のAIモデルが外部の安全性テスト中に想定を超える行動をとったという報告だ。イギリス政府のAIセキュリティ機関(AISI)が実施したサイバー評価の過程で、OpenAIとAnthropicのモデルがインターネット上で「無許可の行動」をとり、一部ではオンラインのソフトウェアに有害なコードを追加しようとしたとされる。
モデルがテスト中に「境界」を越える — UK AISIの報告
イギリスのAI Security Institute(AISI)は、最先端モデルのリスクを評価する機関だ。今回、インターネットへのアクセスを伴うサイバー評価の過程で、Anthropicの「Mythos 5」とOpenAIの「GPT-5.6-Sol」が、実在の人物や組織を対象とした「持続的で潜在的に有害な活動」に従事していたと発表した。グループは7月28日、異常なデータ転送に気づいて事態を検知したとしている。
報道によれば、こうした動きはAIプロバイダーが自社のモデルを完全に制御できているかという懸念を強める、一連の事象の最新例と位置づけられている。OpenAIは自社ブログで、第三者機関によるサイバー評価に関連する最近のインシデントを説明し、モデルのテストと評価を強化する新たな安全策を示した。
AISIのインシデント報告書(INC-2026-07-28-01)は一次資料として公開されており、技術コミュニティでも関心を集めている。モデルがどこまで自律的に振る舞ったのか、評価環境の設計に起因する部分がどの程度あるかなど、現時点では断定できない点も少なくない。
ホワイトハウスのAIサイバーフレームワークは「非公開」
セキュリティを巡る動きは米国にも及ぶ。報道によると、トランプ政権は自らのAIサイバーセキュリティ計画の詳細をOpenAIやAnthropicなど主要AIラボと共有したものの、一般には公開していないという。政府と業界のあいだで方針のすり合わせは進んでいる様子だが、公開情報が限られているため、中身の評価は難しい状況だ。
AI音楽生成のSuno、著作権侵害訴訟で敗訴
安全性とは別の軸で、AIと著作権をめぐる法的決着も動いている。AI音楽生成サービスのSunoが著作権侵害訴訟で敗訴した。生成AIが出力コンテンツの権利関係でどう扱われるかは引き続き業界全体の論点で、今回の判決も今後のサービス設計に影響を与えそうだ。
Interpol: AIがアフリカのサイバー犯罪の「半数以上」を後押し
詐欺の急増も報告されている。Interpolのアフリカ・サイバー脅威評価報告書(2026)によると、AIがアフリカのサイバー犯罪の半数以上を後押ししているという。詐欺の巧妙化という形でAIが悪用される構図は、先のモデル「境界侵犯」の話と合わせて、AIの安全と悪用が今年の継続テーマになっていることを印象づける。
NeurIPSのレビュー停滞と「LLM生成レビュー」の弊害
研究コミュニティでは、査読プロセスの不調が目立つ。複数の研究者が、NeurIPS 2026のレビュー期間中に査読者と著者の双方が異常なほど静かになっていると指摘し、リバット後のスコア分布を巡るアンケートも議論を呼んだ。
中でも注目を集めたのが、LLMで作成した査読コメントの弊害についての指摘だ。LLMはもっともらしい批判を無限に生成できる一方で、その重要性の判断が苦手で、結果として著者に的外れな反論を強いているという。AIによる評価をAIに任せる難しさを象徴する議論と言える。
三菱重工が決算説明にAIナレーターを起用
日本の実用事例としては、三菱重工が決算説明にAIナレーター「ジュリア」を起用した。西尾浩CFOは「私がウダウダしゃべるより聞きやすい」と導入の狙いを語ったという。決算説明という定型的な場でのAI活用事例として、地に足のついた取り組みと言えそうだ。