自律的に増殖するAIウィルスが実証される

トロント大学、Vector Institute、ケンブリッジ大学、ServiceNowの合同チームが、オープンウェイトのLLMを悪用して「自律的に広がり続けるコンピュータウィルス」の概念実証(PoC)を公開した。奪ったGPU上でLLMを動かし、推論を使って標的ごとに攻撃手法を変えながら感染を広げる仕組みで、APIへの依存がないため監視や無効化も難しいという。

実験では脆弱性の検出に約80%、エクスプロイトの成功に約53%、自己複製に88%という成功率を記録し、全体でも約37%の成功率に達した。研究チームは「自己充足的なAI駆動の脅威はもはや理論上のものではない」とし、将来のインターネットが攻撃・防御のAIエージェントが入り混じる「生態系」になる可能性を指摘している。

AIは「良いエンジニア」だが「悪い研究者」

同じく注目を集めたのが、AIに本当の研究をさせられるかを問う実験結果だ。プリンストン大学やAI安全研究所などのチームは、NeurIPS 2026に投稿された未公開論文2本の「核心の問い」をフロンティアエージェントに解かせ、著者自身に査読させる「シャドウ評価」を行った。

結果は、エンジニアリングに必要な作業はこなせるものの、トップ会議レベルの独創的な研究は生み出せなかった。早い段階で少数の方向に固まってしまい、フィードバックへの修正も不十分で、見込みのない路線から抜け出せない傾向が見られたという。両論文とも著者からReject判定を受けた。AIが自動で研究開発を進める「再帰的自己改善」がどれほど早く進むかを見極めるうえで、重要な手がかりになりそうだ。

AI業界1337人超が「開発のペーシング」を米国に要請

OpenAI、Anthropic、Google DeepMind、Thinking Machines、Meta、Safe Superintelligence Incなど主要ラボのチーフサイエンティストやCEOらが名を連ねた声明が発表された。「AI研究の自動化に近づいている可能性」を踏まえ、米国政府に対し、フロンティア全体の進展を意図的に調整するための技術的・統治的な道具整備を支援する国際的枠組みを求めている。

各社・各国が一方的に減速できなくなっている現状を踏まえ、社会が新しい能力の段階ごとに適応する時間を確保する仕組みが必要だと訴えている。安全性よりも、人間同士の協調と集団行動をどう設計するかという問題に焦点が当てられた点が特徴的だ。

NVIDIAのCUDA、AIコーディングエージェントが脅かす

NVIDIAがGPU市場で築いた競争優位の源泉であるCUDAエコシステムが、AIコーディングエージェントによって新たな圧力に直面していると報じられた。他社製GPU向けにCUDA相当のコードを自動で書き換え・移植するエージェントが広がれば、CUDAへの囲い込みが効かなくなる可能性がある。

ハードウェアの性能差が縮まる中、ソフトウェア層の壁こそがNVIDIA優位の柱とされてきただけに、コーディングを自動化するエージェントがその壁をどう削っていくかは、GPU競争の行方を左右しかねない視点だ。

量子化は知識を「非線形に」傷つける

ローカルでLLMを動かす際の定番手法である量子化について、Qwen3.6 27Bを使ったケーススタディが「知識へのダメージは非線形に拡大する」との分析を発表した。一段階ビット数を下げた程度では影響は限定的でも、ある閾値を超えると能力が急激に落ち込む傾向が見られるという。

一方でRedditの実利用レポートでは、DeepSeek V4-Flash-0731は「量子化の影響をトラックのように受ける」との指摘があり、Q3でQwen3.6-27B相当の代替になり得るものの、Q2では実用性が落ちると報告されている。モデルごとに量子化の耐性が大きく異なることが、ローカル運用の実情として改めて浮き彫りになった。

EUがAI「ギガファクトリー」7拠点の入札を開始

欧州連合(EU)は、AI競争力の立て直しを狙う300億ユーロ規模の「AIギガファクトリー」7拠点について、入札の受け付けを開始した。大規模な学習用計算基盤を域内に整備し、米中に後れを取る状況を是正する狙いだ。

脱炭素との両立や電力確保の課題は残るものの、規制(AI Act)で盾を突き合わせる戦略から、計算資源の面でも独自路線を打ち出す方向に舵が切り始まった形だ。