AIは人間の専門家より「説得できる」———大規模実験で実証

Oxford大学、Stanford大学、London School of Economics、英国AIセキュリティ研究所の共同研究チームが、AIシステムの説得力について大規模な実験結果を発表した。政策問題や慈善活動の寄付額について、AIが人間の専門家よりも確実に意見を変えられるという結果だ。

実験では6,923人を対象に18,978回の対話を行い、テキストベースの説得においてAIが人間の専門家を上回った。人間がAIと同等の成績を収めるには、AI側に制約をかけた場合のみだったという。「AI systems were reliably more persuasive than expert humans(AIシステムは専門家よりも確実に説得的だった)」という結論は、今後の政策形成や世論操作のリスクを改めて浮き彫りにしている。

この研究はImport AIの最新号(462号)でも取り上げられ、「スーパー説得(superpersuasion)」や「ASI(人工超知能)への経路」という観点からも議論されている。

ヨーロッパ初のエクサスケール「JUPITER」が見せる科学の未来

ドイツのForschungszentrum Jülichで稼働するJUPITER――ヨーロッパ初のエクサスケールスーパーコンピュータが、ISC 2025(ハンブルク)で実際の科学成果を披露した。NVIDIA Grace Hopper SuperchipとQuantum-X800 InfiniBandで構成されるこのシステムで、4つのプロジェクトが注目を集めている。

  • 脳の細胞スケールマッピング:人間の脳を細胞レベルで詳細にマッピング
  • 1km解像度の地球気候シミュレーション:全球を1km格子で計算
  • 次世代無線ネット向けAI:6G等の無線基盤を支えるAIシステム
  • 50量子ビット量子コンピュータのシミュレーション:ユニバーサル量子計算の模擬

Jülich Supercomputing CentreのThomas Lippert所長は「JUPITERにより、ヨーロッパはエクサスケール時代に参加するだけでなく、あらゆる科学・AI分野で世界をリードする」と述べている。また、Los Alamos National Laboratory(LANL)もNVIDIA Vera CPUを採用した新スーパーコンピュータ「Mission」「Vision」「Veritas」を発表し、エージェント型科学AIの加速を掲げている。

Sakana AI「Fugu」がフロンティア級性能を宣告

日本のSakana AIがリリースした「Fugu」モデルが、一般利用可能なフロンティアモデルを上回る性能を示したと発表された。エンジニアリング、科学、推論の難関ベンチマークにおいて、Fable 5やMythos Previewと肩を並べるレベルだという。

特筆すべきは、Fuguが「輸出規制のリスクを負うことなく」フロンティアレベルの実力を発揮する点だ。Fable 5やMythos 5が米国政府の指示で提供停止になった状況を踏まえると、地政学的な制約に縛られないフロンティア級モデルの存在意義は大きい。日本の開発者コミュニティでも早速、opencode等のCLIツールからFuguを利用する手順が共有され始めている。

GLM Coding Planが半年で6倍値上げ

Z.aiのGLM Coding Planが、2025年後半の「月額$3から使える」という低価格で爆発的に普及した後、半年で大幅な値上げを実施した。Lite プランは$3/月から$18/月(約6倍)、Pro プランは$15/月から$72/月(約4.8倍)に引き上げられた。さらに週次制限が新設され、旧プランのユーザーは新プランへの強制移行の対象となっている。

Claude Code等のツールからGLMモデルを利用していた開発者にとって、コスト構造の劇的な変化はインパクトが大きい。GLM-5.2は引き続き強力な選択肢だが、「安価な代替」としての位置づけは薄れつつある。

AI生成コードの「半数は脆弱」――動くことと安全ことは別物

Qiitaで注目を集めている記事が、AI生成コードのセキュリティリスクを実践的に検証している。AIにコードを書かせると数十秒で動く関数ができあがり、テストも通る。しかし「動く」と「安全」は別の問題だ。

記事では、AI生成コードを「動くか」と「安全か」で分けて検証するアプローチを提案しており、結果として約半数のコードに何らかの脆弱性が見つかったという。AIコーディングツールの普及が進む中、この視点は実務上重要な示唆を含んでいる。

ローカルLLM構築者に朗報――EUのDDR5価格が急落

RedditのLocalLLaMAコミュニティで、ヨーロッパ4カ国(ドイツ・オランダ・スペイン・ベルギー)のDDR5価格を25日間追跡したデータが注目を集めている。結果は明確で、主要なDDR5メモリキットの価格が13%〜28%下落している。

例えばG.Skill DDR5 Aegis 2x16GB 6000は€579から€419へ(-28%)、Kingston FURY Beast RGB 2x16GB 6000は€499から€369へ(-26%)下落。国別ではドイツとオランダの価格差が大きく、ドイツ側の価格競争が激化しているという。ローカルLLMの推論に必要な大容量メモリのコストが下がることは、オープンソースAIの裾野を広げる要因になりそうだ。