World Action Models――ロボットが行動の結果を事前に予測する仕組み
復旦大学、上海イノベーション研究所、シンガポール国立大学の共同研究チームが、ロボットAIの根本的な弱点に取り組む新しいモデル群「World Action Models(WAM)」を体系的に整理した調査論文を発表した。
従来のロボットAIは、カメラ画像から動作へのマッピングを学習するだけで、行動によって環境がどう変化するかを理解していなかった。WAMはこれを変える。行動前に環境の変化を予測し、その予測を行動生成に結びつけることで、未知の物体や場面への対応力を高める。
2つのアーキテクチャ
研究チームは約100本の論文を2つの系統に整理している。
- カスケード型WAM: まず世界モデルが次の状態の画像・動画を生成し、別のモジュールがそこから制御コマンドを導出する。UniPiやAVDC、LAPAなどがこの系統に属する。
- 統合型WAM: 未来のフレーム生成と行動生成を1つのモデルで行う。GR-1、GR-2、WorldVLAは画像と行動を統一されたトークン列として扱い、PADやDreamZeroは拡散ベースで並列処理する。NvidiaのCosmos Policyはコントローラ、シミュレータ、評価モデルの3つの役割を同一アーキテクチャで担えるという。
ポイントは「日常動画からの学習」
WAMが特に注目される理由は、ロボットの操作ラベルがない日常の一人称動画(Ego4Dなど)から学習できる点にある。従来のロボットAIにとってこの種のデータはほぼ利用不可能だった。RDT2データセットはこの手法で約10,000時間の素材を収集している。
ただし課題も明確だ。DreamZeroは1秒間に約7回の予測が限界で、従来のロボットコントローラは約50回の処理が可能。評価手法も視覚品質中心で、物理的な妥当性を測る指標が不足している。「Wow, Where, Val!」ベンチマークでは、視覚的に説得力のある動画でも実際の制御に使える成功率はゼロに近いモデルが多いという。
MetaのV-JEPA 2は、画素を直接生成せず抽象的な未来表現のみを予測する手法で、計算コストを大幅に削減できる可能性を示している。Yann LeCunが提唱するJEPAアプローチの有効性を裏付ける結果と言えそうだ。
マイクロソフトAI責任者「18ヶ月でホワイトカラー仕事が自動化される」――だが現実は複雑
マイクロソフトAIのCEO Mustafa Suleymanが、Financial Timesのインタビューで「今後12〜18ヶ月で、コンピュータに向かって座って行う仕事の大部分がAIによって完全自動化される」と予測し、議論を呼んでいる。会計、法務、マーケティング、プロジェクト管理などを脆弱な領域として挙げた。
Suleymanは計算能力の指数的成長を根拠に挙げ、「新しいモデルを作ることはポッドキャストを作るようなものになる」と述べ、スーパーレリジャンスの達成を自身の中核ミッションと位置づけた。また、マイクロソフトがOpenAIへの依存を減らし、独自の最先端基盤モデルを開発する方針であることも明らかにした。
予測と現実のギャップ
ただし、実際のデータはSuleymanの予測ほど劇的な変化を示していない。Thomson Reutersの2025年レポートによると、弁護士や会計士は文書レビューや定型的な分析にAIを活用し始めているが、生産性の向上は限定的で、大量の雇用喪失には至っていない。
非営利団体METRの研究では、AIの導入がソフトウェア開発者の作業時間を逆に20%長くしたという結果も報告されている。Apollo Global Managementの主任エコノミスト Torsten Slokは、Big Techの利益率が2025年第4四半期に20%以上増加した一方で、より広範なBloomberg 500指数はほぼ変化がなく、「投資家はテクノロジー以外の分野でAIがより高い収益をもたらすとは考えていない」と指摘した。
とはいえ、AIによる雇用減少の兆しはある。雇用コンサルタント会社Challenger, Gray & Christmasによると、今年のAI関連の人員削減は約49,135件に上る。2月にはソフトウェア株が自動化への懸念から「SaaSpocalypse」と呼ばれる大幅な売り込みに見舞われた。
ローカルLLM推論の最前線:MTPとDFlashの実験結果
ローカルLLMコミュニティでは、推論高速化技術の実験が活発に行われている。
MTP(Multi-Token Prediction)の限界
あるユーザーが、中古で500ユーロのゲーミングノートPC(RTX 3060 6GB VRAM)でQwen3.6-35B-A3Bモデルを使い、llama.cppに最近統合されたMTP機能の性能を検証した。結果は「期待外れ」だった。MTPによるプロンプト処理の遅延が、生成速度のわずかな向上を上回り、トータルでは逆に遅くなった。ただし、draft KVキャッシュの量子化にq4_0を使用しても品質に影響がないという実用的な発見もあった。
デュアルRTX 3090でのDFlash検証
別のユーザーは2枚のRTX 3090でDFlash(speculative decoding)を試し、約40トークン/秒を達成。P2P通信を有効にするための特別なドライバ設定など、ハードウェア面での工夫も紹介されている。
LLMアーキテクチャの最新動向
KV Sharing、multi-head Comparator(mHC)、Compressed Attentionなど、LLMの基盤アーキテクチャに関する最新の研究動向もコミュニティで議論されている。これらは長いコンテキストを扱う際のメモリ効率と計算効率の改善を目指すものだ。
LocalLightChat――15年前のノートPCで50万トークンを扱うチャットUI
「LocalLightChat」という新しいオープンソースのAIチャットインターフェースがHacker Newsで話題になっている。特徴は、15年前のノートPCでも50万トークン以上のコンテキストをスムーズに処理できるという点。ダウンロードサイズは60MB未満で、Windows、Linux、macOS向けのポータブルバイナリとして提供されている。
50,000トークンのコンテキストを2,000トークンに圧縮する「Compress & Clone」機能や、サーバーサイドでの全文検索(100ms未満のレイテンシ)、ドキュメントやアーティファクトの編集機能など、実用的な機能が揃っている。ローカルAIとクラウドAPIの両方に対応する点も特徴的だ。