11月6日(日本時間夜)までの収集分は、実用に近づくロボットと、冷え込む市場が並ぶ一日でした。サンフランシスコではヒューマノイドロボットによる清掃サービスが始まり、その体験記が話題に。一方でAnthropicのIPO難航の報道やTeslaのCybertruck打ち切りなど、資本市場と経営判断の動きも目立ちました。

ヒューマノイド清掃サービスがサンフランシスコに──遠隔操縦でも「未来の味」

MIT Technology Reviewの記者が、サンフランシスコで始まったTau Roboticsのヒューマノイド清掃サービスを体験しました。Xの投稿を見てすぐに予約を取ったというものです。

現時点でロボットは完全な自律ではなく、頭と手首に搭載したカメラを通じて人間のオペレーターが遠隔操縦します。記事では「Waymoよりもラジコンに近い」と表現され、ベッドメイキングや洗濯物をたたむ作業では「運動ガイド」と呼ばれる人間側の補助も必要になるといいます。

それでも注目すべきはデータの収集です。ロボットが清掃する様子はすべてTauの学習データとして記録され、より自立した次世代モデルの訓練に使われます。拭かれたカウンターも畳まれたTシャツも、次のモデルを賢くする教材になる。このデータの価値が大きいため、価格は最先端とは思えない水準に抑えられており、体験時は1時間30ドル、現在は週1回2台で60ドル、単発の依頼は100ドルだそうです。

ロボットの姿もユニークです。全長は約140cm。3Dプリントの頭部には本部と通信するためのアンテナがつき、両手は人間型ではなくクロー型です。人間らしい手は耐久性が足りず、クローの方が大半の清掃作業ではむしろ優秀だったといいます。フローリングを傷つけないよう、ロボットはグリップ力のあるソックスを履いていました。徹底的だが遅い、というのが体験のまとめで、コストパフォーマンスだけなら自分で掃除した方が早い。それでも「ジェットソンズ」のような未来を味わえる一時間として、筆者には価値があったようです。

Anthropicの1.5兆ドルIPOが早くも難航

The Decoderの報道によると、AnthropicのIPO計画が難航しているといいます。1.5兆ドルという評価額に投資家が難色を示しており、加えてテック株全体の売りが重しになっていると伝えています。

ここ数日のAI株急落(本誌でも連日扱ってきました)は、大型IPOを取り巻く環境を冷やしています。OpenAIのグレッグ・ブロックマン氏が「2027年にはIPO可能な状態にある」と述べたのは先日の通りですが、市場が冷えた局面での巨大評価額は、投資家の吟味が一段と厳しくなることを意味します。現時点では公募の規模や時期の詳細は不明で、交渉が続くのか、評価額が修正されるのか、注視が必要です。

Tesla、Cybertruckを打ち切り──Musk氏はロボティクスとAIへ

Financial Timesが報じたところによると、Teslaは電気ピックアップトラック「Cybertruck」の生産を終了し、イーロン・マスク氏はロボティクスとAIに経営の焦点を移すといいます(Hacker News経由で話題化)。

ロボタクシーやヒューマノイド「Optimus」の開発を進めてきたTeslaにとって、ロボティクスとAIが次の柱であることは以前から示唆されてきました。実際に住宅内で働くロボットの商用サービスが始まった今、大手と新興の両方が「家の中のロボット」を狙う図式が見えてきます。

Cohere「AIのためにもガスを増産せよ」──電力需要が引き起こす論争

DeSmogの報道(11月4日付)によると、生成AI企業のCohereは「より多くのAIを動かすためには、より多くのガスの生産が必要になる」と主張したといいます。データセンターの急増で電力需要が発電容量を圧迫する中、AI業界側から化石燃料の増産を求める声が出た形です。

AIの電力問題をめぐっては、Googleがワイオミング州で170億ドル規模のデータセンター建設を計画するなど、投資はむしろ拡大しています。需要が供給を追い越し、原子力や再エネに加えて天然ガスまで議論の対象になるのは自然な流れですが、気候政策との整合をどう取るのかは今後の論点になりそうです。

中国のオープンウェイトモデルからセキュリティ能力が消える

RedditのLocalLLaMAコミュニティで報じられているように、Kimi K3.1とTencentのHy4が、サイバーセキュリティ・リバースエンジニアリング・脆弱性パッチ関連の能力をオープンソースモデルから取り除いているといいます。Tencentの研究ページにも「潜在的な攻撃能力」への対応についての言及があるとされます。

先日紹介したHy4は、画像理解とコンピュータユースに対応して「中国勢2位」を主張する強力なオープンモデルでした。しかしオープン版では、セキュリティ研究に使える能力が意図的に絞られている可能性があります。投稿者はこれを「中国の最新オープンウェイトモデルで繰り返される悪いパターン」と指摘しています。ローカルLLMをセキュリティ研究に使うユーザーへの影響と、どこまでが意図的な制限なのかは今後も注視したいところです。

Inkling 2 Smallの訓練詳細──68時間・12Tトークンで中国モデルと互角以上

Thinking Machinesの「Inkling 2 Small」について、Latent SpaceのAI Newsが訓練の詳細を伝えました。17B活性・594B総パラメータのこのモデルは、12Tトークン未満・68時間(3日足らず)という短期間の事前学習をNVFP4でスクラッチから行い、単一のRLジョイントランで仕上げられたといいます。同サイズの中国製モデルと競い、しばしば上回る成績を収めており、ビジョンエンコーダーも非常に高品質と評価されています。

同ニュースレターは、Tinkerの1周年やInteraction Modelsといった成果を踏まえ、Thinking Machinesを「米国フロンティアで高い成果を出すネオラボ」と評価しています。少数精鋭の研究所が効率重視の訓練で大手に迫る時代の到来なのかもしれません。

その他の動き

  • JFrogが4年ぶりの高成長を見通しました(Bloomberg)。AIがハッカーに高度な手法を与えることでセキュリティ需要が高まっているといい、CEOは「ソフトウェアサプライチェーンを守らなければどうなるかというパニックがある」と語りました。
  • Anthropicが、研究者によるClaudeの科学利用をまとめたレポート「AI for scientific discovery」を公開しました。
  • AP通信は、減速を求める声が高まる中でAnthropicがAI開発を急速に加速させていると報じました。
  • AlibabaのQwen公式アカウントの投稿をもとに「Qwen 4がステルス発表された」との報告がLocalLLaMAに出ています。情報はまだ限定的です。