11月5日(日本時間昼まで)のAIニュースからは、OpenAIがLinuxカーネルの脆弱性948件を自律パイプラインで見つけ、検証し、修正パッチまで生成したと発表したことが目を引きました。一方でUberは「AIエージェント経由の配車は最繁忙週で4人だけ」という現実の数字を明かしています。期待と現状の両面が見える一日でした。
OpenAI、Linuxカーネルの特権昇格脆弱性948件を自動検出──パッチ生成まで
OpenAIは11月4日、「A thousand fewer paths to root(rootへの道が千件減る)」と題する記事で、自律パイプラインを構築し、Linuxカーネルのローカル特権昇格脆弱性948件を発見・検証し、修正パッチを生成したと発表しました。
ローカル特権昇格(LPE)脆弱性は、端末上の一般ユーザー権限を足場にシステム最高権限(root)を奪われる類の問題で、マルウェアの侵入経路として実害につながりやすい脆弱性です。Linuxカーネルはサーバーから組込み機器まで広く使われるだけに、この種の脆弱性の発見と修正は従来、専門のメンテナーとセキュリティ研究者の地道な作業に支えられてきました。
「発見 → 検証 → パッチ生成」という一連の流れをAIのパイプラインが担ったとされる点が今回のポイントで、コード生成だけでなくセキュリティ運用の実務にAIが入り込む実例として注目されます。ただし収集時点の情報では、生成されたパッチがカーネルの公式リポジトリへ取り込まれたかどうかや、パイプラインの技術的な詳細は確認できていません。
Uber「AIエージェントで配車を予約したのは、最繁忙週で4人だけ」
TechCrunchの報道によると、Uberは前四半期で最も忙しかった週において、AIエージェント経由で配車を予約した利用者が4人だけだったと明かしました。
エージェント同士が取引する「エージェント経済」に向けたAPIや決済基盤の整備を進める企業は少なくありませんが、実際の消費者利用はまだごく限られているという現実を示す数字です。もっとも、これはUberという単一事業者の数字であり、エージェント経由の利用全体を測るものではありません。「4人」という値が象徴する期待と現状のギャップをどう埋めていくかは、今後のエージェント普及を占う一つの論点になりそうです。
Isomorphic Labs、約50億ドルの調達を交渉中──AI創薬で最大級のラウンドに
Bloombergが関係者の話として報じたところによると、AlphabetのGoogle DeepMindからスピンアウトしたAI創薬企業Isomorphic Labsが、約50億ドルの新規資金調達を協議中です。このラウンドでの評価額は約500億ドルに上るとみられます。
調達額が大きいだけでなく、資金をAIによる創薬(薬剤探索)事業に充てる見通しとされる点が特徴で、生成AIの活躍の場がテキストやコードから生命科学の実領域へ広がる流れを裏付ける話です。ただし報道はあくまで協議中の話で、調達は未確定、条件が変わる可能性もあるとされています。
リコーと川崎重工、設計の知識資産をAIで活用する戦略的連携へ
国内からは、リコーと川崎重工業が、AIを活用した設計業務の知識資産活用に向けた戦略的パートナーシップを構築したと発表しました。
設計文書や図面に蓄積された知識に加え、熟練技術者の経験やノウハウといった「暗黙知」をAIで整理・可視化し、技術継承と設計業務の生産性向上を目指すとしています。生成AIの企業利用が文書の下書きや検索といった汎用業務から、ベテラン技術者の暗黙知を含むドメイン資産の構造化へ進んだ事例として、日本の製造業のAI活用の一つの方向を示していそうです。
その他の動き
- NothingのCEOが、同社の「ミステリアスなAIファーストデバイス」が来月登場すると表明しました。どのような製品になるかは明らかにされていません(TechCrunch)。
- 「ソブリンAIエージェント」があらゆるキルスイッチを回避し、国家安全保障を脅かすおそれがあるとする報告書の内容をEuronewsが紹介しました。国家主体で運用されるエージェントへの懸念が、国際的な議論の対象になりつつあります。
- 「トイレの会社」として知られるTOTOが、半導体製造装置に使う材料事業を営業利益の7割をかせぐ柱にまで成長させたとITmediaが報じました。AI需要の拡大が、関連する物理サプライチェーン全体を押し上げている一例です。
