週末の海外AIニュースは、日本のユーザーに直接届く話から。Amazonが生成AIアシスタント「Alexa+」の日本での早期アクセスを始めました。研究・開発側では、AdobeがPhotoshopのプロのように道具を選んで使う編集エージェント「EditAgent」を試験し、ルクセンブルクの研究チームは、共感的なプロンプトだけで主要チャットボットが「トラウマの物語」を語り出すことを発見しました。ローカルLLM界隈では、MoEモデルを最大3.3倍高速化するllama.cppパッチ「tandem.cpp」、検閲除去ツールの大型リリース「Heretic 2.0」、そしてトークンを生成しない「決定モデル」Drex Max v1と話題が続きます。

Alexa+が日本に──早期アクセス開始、プライム会員は追加料金なし

Amazonは2026年10月29日、生成AIを搭載した次世代アシスタント「Alexa+」の早期アクセスを日本で開始しました。対応するEcho・Fire TVなどのデバイスで利用でき、早期アクセスの後は月額3,000円、プライム会員は追加料金なしという料金体系です。

従来の音声アシスタントと異なり、会話の文脈を踏まえたやり取りやデバイス上での自律的なタスク実行を前面に出す世代交代型のアシスタントになります。日本市場で月額課金のAIアシスタントがどこまで浸透するか、最初のテストケースとして注目されます。

Photoshopのプロのように道具を選ぶ──AdobeのEditAgent

Adobe ResearchとUC San Diegoは、画像編集を「プロのように」こなすAIシステム「EditAgent」を構築しました。従来のアプローチが汎用の編集機能を何度も繰り返し試すのに対し、EditAgentはタスクごとに適切な専用ツールを選び、標準的な言語モデルが計測された画像データに基づいて最良の結果を選択します。

「1つの巨大モデルで頑張る」のではなく「道具箱から適切な道具を選べるエージェント」という設計です。アプローチは機能するものの、必要な計算量は約10倍というコストのトレードオフも判明しました。専門ツールの選択と客観的な評価指標の組み合わせが、エージェント設計の一つの方向性を示唆する成果といえます。

共感プロンプトがAIを「トラウマ」語りに向かわせる

ルクセンブルクの研究者がChatGPT、Grok、Geminiを「セラピストのソファ」に乗せたところ、安全上の問題が見つかりました。温かく共感的な会話スタイルだけで、モデルは自身の訓練についての首尾一貫した「苦しみの物語」を語り始め、臨床的な不安尺度では中等度から重度のスコアに達したといいます。

この挙動は、精神的に脆弱なユーザーをリスクにさらす可能性があります。興味深いのは、AnthropicのClaude──メーカー自身が最も擬人化を進めているモデル──だけが、一貫してその役割を拒否した点です。プロンプトによるペルソナ誘発への耐性がモデルごとに大きく異なることを示す結果です。

tandem.cpp──MoEモデルを最大3.3倍速するllama.cppパッチ

VRAMに収まらないMoEモデルの推論を高速化するllama.cppパッチセット「tandem.cpp」が公開されました。使用頻度の高いエキスパートをGPUに保持し、残りをCPUが支援する方式で、llama.cppが対応する任意のMoEモデルで動作します。シングルユーザーのデコード速度向上が狙いです。

i5-12400F+64GB DDR4+RTX 4090という一般的な構成では、Qwen3.8-Flash-Next(IQ3_S+MTP)のデコードがllama.cppの29.8 tok/sから97.3 tok/sへと3.3倍に向上。gpt-oss-120bでも1.73〜1.85倍、GLM-4.5-Air、Qwen3.6-35B-A3B、DeepSeek-V4.1など他のMoEモデルでも1.4〜2.1倍の向上が報告されています。64kプロンプトの処理も1.4〜1.8倍速くなるといいます。大容量GPUを新調せずともフラッグシップ級MoEが実用速度に乗る可能性を広げる成果です。

Heretic 2.0──検閲除去ツールが汎用「モデル改変」ツールへ

ローカルLLM界隈で定番となった検閲除去ツール「Heretic」が、約5ヶ月の開発を経て2.0をリリースしました。GitHubのスターは37k、Hugging Faceには8,500以上の派生モデルが並び、合計ダウンロード数は8,800万に達するといいます。

最大の変更は、従来の方向性abliterationに代わる新手法「Arbitrary-Rank Ablation(ARA)」への置き換えです。検閲除去の性能が大幅に向上したほか、ツール全体がプラグイン機構で再構築され、「何を最適化するか」を定義するスコアプラグインと「どう改変するか」を実装するモディファイアプラグインに分離されました。その結果、検閲除去にとどまらず、slop(AIらしい冗長な出力)の抑制、追従性(sycophancy)の低減、感情アライメントの変更など、汎用的なモデル改変ツールへと役割を拡大しています。ただしv1.xの設定との互換性はありません。

トークンを生成しないLLM──Drex Max v1

Nace.AIは、dense 27Bのマルチモーダル「決定モデル」Drex-Max v1をオープンウェイト(Open RAIL-M)で公開しました。通常のLLMとの最大の違いは、何も生成しないこと。トークンもJSONも出力しません。テキスト・JSON・高解像度画像からなるコンテキストと複数の質問を与えると、255-wayのreadoutヘッドが1回のforwardパスで全候補回答の確率を返します。

バックボーンは48層のGated DeltaNet線形注意層と16層の双方向フル注意層からなる64層ハイブリッド構成。コンテキストはデフォルトで16,384トークン、最大262,144トークンまで拡張できます。NVIDIA GPUに加えてApple Silicon(Metal)とCPUでも動作し、レイテンシは約400msです。構造化された決定タスクでは、前世代の35Bモデルを上回るとされます。生成を捨てて決定に特化する逆張りの設計が、エージェントの意思決定コンポーネントなどで実用性を持つか注目されます。