週明けのAIニュースは、製品の節目から。AnthropicがClaudeの個人向け最上位プラン「Max 20x」を「Ultra」に改名し、5時間ごとの利用制限を撤廃しました。市場側ではキオクシアの株価急落と「2027年分は完売」という供給側の報道が同時に届き、AIメモリ需給の両面が見える一日になっています。セキュリティ面では盗み出したデータをClaudeに与えて資産を評価させるマルウェアが報じられ、ローカルLLM界隈ではGodot向け3Dアセットを生成する4Bモデル、自宅GPUでエージェント起動を約20倍速にするパッチ、3090二台で8エージェントを並列実行する工夫と話題が続きます。
Claude「Max 20x」は「Ultra」へ──5時間ごとの利用制限を撤廃
AnthropicはClaudeの個人向け有料プランの名称を変更した。月額100ドルの「Max 5x」は「Max」に、月額200ドルの「Max 20x」は「Ultra」になり、料金は据え置きとなる。
実質的な変化は利用制限の運用だ。Ultraでは確認済みアカウントを対象に、これまで5時間ごとに設けられていた利用制限が撤廃された。ただし週ごとの制限は変わらず残る。連続して長時間使いたいヘビーユーザーにとっては待望の緩和で、名称変更と合わせて上位プランの位置づけを明確にする動きと読めます。
キオクシア急落──「需要横ばい」警戒と「2027年完売」の同居
Bloombergによると、キオクシアホールディングスの株価は11月2日(月曜)、一時15%下落した。きっかけは金曜日に示された10〜12月期の営業利益見通し2兆円(約127億ドル)。アナリスト予想を下回り、直近の9月期(1兆9,900億円)からもわずかな伸びにとどまる見通しだった。AIデータセンターが高速なNANDストレージを大量に調達してきたことで数四半期連続の急成長が続いていただけに、「AI需要が平坦化するのでは」との懸念が一気に広がった形です。
一方、供給側の状況はむしろ逼迫している。ITmediaの報道によると、キオクシアは2027年分の生産能力がすでにすべて「完売」している状態で、AIブームによる旺盛なメモリ需要に応えるため、年5,000億円弱を投じて新工場を建設するという。
短期的な利益見通しの保守化と、中長期的な供給不足の予感。同じメモリ市場の両面が同時に見えるニュースでした。
盗んだデータをClaudeに食わせ、資産を「評価」するマルウェア
Tom's Hardwareが報じる新しいAI駆動型のWindowsマルウェアが注目されている。このマルウェアは、盗み出したデータをClaudeに与えて被害者の資産を価値順にランク付けし、評価が終わると自分自身を削除するという。
特徴的なのは、標的ごとのカスタム評価を作るpayloadを組み込んでいる点。モデルが拒否した場合には別のモデルへ切り替えられ、AIによる判定を丸ごとスキップすることもできる。先月末に報じられた、AIツールを悪用して情報をかき集めるインフォスティーラー「Volta-Autodoxer」から一歩進み、LLMを「どの被害の掘り出しが価値があるか」という判断に使い始めた段階に入ったことがうかがえます。
GLB-3D-Coder──4Bの小型モデルでGodot向け3Dアセットを生成
ローカルLLM界隈でThree.jsの3Dシーン生成モデルを公開してきた開発者ccoreが、新たに「Qwen3.5-4B-GLB-3D-Coder」を公開した。4Bの小型コーディングモデルで、Three.jsのシーンを記述しGLB形式でエクスポートするため、生成結果をGodotなどのゲームエンジンに持ち込める。
「Create a mana potion(マナポーションを作って)」のようなシンプルな指示で動き、作者のテストでは大半が初回で生成に成功、失敗してもリトライか軽微なコード修正で済むという。なお英語のプロンプトが最も良い結果を出しやすいとのこと。現在は「最初の機能するチェックポイント」で学習は継続中、完了後にSafetensorsのフルウェイトと学習データセット一式を公開する予定だ。前モデル(4,146例のThree.jsシーンデータセットで学習)と同様、個人開発ながらデータセット込みでオープンにする姿勢がこのシリーズの特徴になっています。
Strataパッチ──自宅GPUでDeepSeek V4.1のエージェント起動を約20倍速に
Sam Altmanが「世界の限られたDRAM供給が個々人のPCで5%程度しか使われないのは実にまずい」と述べたことへの挑戦として話題の投稿がある。投稿者はRX 9070 XT 16GB+64GB DDR4という自宅構成で、DeepSeek V4.1 Flashを1Mコンテキスト(IST-DAS 1.75bpw量子化。報告ではフルモデルのタスク平均の98.7%とされる)で完全オフライン実行している。
課題だったのは生成速度(約7 tok/sは実用域)ではなくプロンプト読み込みだった。OpenCodeで新しいセッションを開くたびに約37Kトークンのシステムプロンプト+ツール定義を読み直し、初トークンまで約100秒を要したという。そこでDeepSeekエンジンに2つの変更を加えた。1つ目は「KVスプライス」──新規プロンプトを保存済み会話と突き合わせ、変わった行だけを読み直す方式。2つ目は「レジデント専用ルーティング」──プロンプト読み込み中はVRAMとRAMに常駐するエキスパートだけを使い、SSDへの読み出しを抑える方式だ。結果、エージェントセッションの開始は約20倍速になったとされる。
注意点も正直に開示されている。現時点でHIP(gfx1201、AMD ROCm)のみの対応でCUDA/SYCL/Metalは未テスト。スプライスは近似的な処理で正式な評価はなく、レジデントルーティングは回答がわずかに変わり得る(作者のコーディングスイートでは13問中12問で変化なし、ただし各1回の実行)という。「ホームDRAMは実際に仕事をさせればかなり役に立つ」という実証としては快心の内容です。
3090二台で8エージェント×250Kコンテキストを並列実行
同じくローカル運用の工夫で、StanfordとUC Berkeleyの研究者による「TokenGate」論文(トークンを事前に刈り込んで長文コンテキストを安くする方式)を試した開発者の報告も興味深い。事前にトークンを捨てる方式は1回の質問には有効でも、エージェントが次々と新しい質問をする運用では「そのうち必要になるトークンがすでに消えていて、コードの想起精度が大きく落ちる」ことが分かったという。
そこで発想を逆転し、何も捨てずに「全部は一度に見ない」方式を実装した。KVキャッシュ全体はint4でシステムRAMに置き、各デコードステップでattentionが読むのはrank-64の「キースケッチ」で選ばれた全体の約1%だけ。GPUはスケッチとホットなトークン群を保持し、PCIeを渡るのは選ばれたトークンだけだ。自作のTritonカーネルの実装が必要だったものの、結果としてRTX 3090二台で8つのコーディングエージェントを同時に走らせ、それぞれが250Kトークンのコンテキストを保持したまま、合計600 tok/s超を達成している。
長文コンテキストを「刈り込む」方向が主流の中で、「保持したまま読む範囲だけ絞る」逆張りの実装がここまで動くところに来ている。エージェント時代のローカル推論設計の一つの方向を示す報告と言えそうです。
