10月16日朝時点のAIニュースまとめです。この一日の大きな流れは「オープンウェイトモデルのローカル動作」でした。Meta、Black Forest Labs、NVIDIAが相次いで、巨大データセンターではなく手元のマシンで動かす前提のオープンモデルを投入しています。モデルの性能を競う段階から「どこで動かすか」を競う段階に入りつつある、という見方もできる内容です。安全性の面ではAnthropicが外部評価機関への深いアクセスを始め、研究面ではGPT-6-Astraが理論物理の未公開問題で専門家並みの成績を残しました。

Meta「Muse Spark Open」——816Bのオープンウェイト、Appleと組んでMacで動かす

Metaは10月15日、オープンウェイトのマルチモーダル混合エキスパート(MoE)モデル「Muse Spark Open」を公開しました。総パラメータ数は816B、そのうちアクティブは42B。テキスト・画像・動画・音声を扱い、コンテキストウィンドウは100万トークンです。Meta自身は「米国発のオープンウェイトモデルとして現時点で最も有能力」と位置づけています。

The Decoderの報道によると、ベンチマークではQwen、GLM、Kimiなど中国勢の最有力オープンウェイトモデルとほぼ互角とされます。ここ数年、オープンウェイトの最上位は中国発モデルが占めてきただけに、米国勢の対抗馬としての意味は大きそうです。

用途はコーディングとエージェントワークに特化していて、長期のタスクや複雑なソフトウェアエンジニアリング、多段階の推論を得意とします。AWSの機械学習ブログによると、マルチファイルのリファクタリングや長時間のデバッグといった実際の開発者ワークフローを想定して訓練されており、公開当日からSageMaker JumpStartでも展開されています(BF16版とNVFP4量子化版)。

注目は動作環境です。TechCrunchは「MetaとAppleが組んだ」と報じました。Muse Spark OpenはApple M5 Ultraを2台搭載したMac Studio上でMLXフレームワークによりローカル動作するよう最適化されているといいます。推論基盤もSGLang、vLLM、TensorRT-LLM、Transformers、MLX、llama.cpp、Unslothと主要エンジンを広くカバーし、AMD・Apple・Intel・NVIDIA製シリコン向けの最適化と、NVIDIA/AMD GPUで最大3.95倍のカーネル高速化をうたうHelionカーネルも同梱されています。

ライセンスはMuse Model Licenseで、商用条項に制限があるものの多くの開発者は無料で利用できるとされます。週頭に公開されたフロンティアモデル「Muse Wonder」に続く、Museファミリーのオープン展開という位置づけです。

Black Forest Labs「FLUX.3 Image Klein」——8GB VRAMで動く4K画像生成

画像生成のBlack Forest Labsは、56億パラメータのオープンウェイト画像モデル「FLUX.3 Image Klein」を公開しました。The Decoderの報道によると、前世代からパラメータを38%減らしながら、ネイティブ4K生成、ピクセル単位の編集、最大10枚の参照画像を使った生成に対応。内部テストではプロプライエタリ(非公開)モデルを上回る性能とされ、必要VRAMは8GBです。専用ハイエンドGPUが要らない画像生成モデルとして、個人環境への普及を狙った設計といえます。Hugging FaceのDiffusers対応も同時に発表され、ComfyUI向けの版も公開されています。

NVIDIA「Nemotron 3.5」——データセンターからエッジまで、エージェント向け3モデル

NVIDIAもオープンモデルを拡充しました。NVIDIAブログの発表によると、新しくなのは3種類です。

  • Nemotron 3.5 Super VL(120B): 常駐型のエンタープライズエージェント向けに、タスク完了速度と精度を両立させるオープンのマルチモーダルモデル
  • Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B(24GB): ローカルのエージェントワークロード向けに、GBあたりの知能と速度のバランスを最適化
  • Nemotron 3.5 Bolt E4B(4GB): 高速な会話エージェント向け。10月23日提供開始

8月公開の高スループット向けLightning、難問推論向けUltraと合わせ、エンタープライズサーバーからエッジデバイスまでをオープンモデルで縦串にカバーする構えです。The Decoderは、数十の組織がすでにSuper VLをファインチューニングしていると伝える一方で、「性能を出し切るにはNVIDIA製ハードウェアの購入が前提になる」との見方も紹介しています。

AnthropicがMETRに「従業員レベル」のアクセス——公表をブロックする権利も放棄

安全性を巡る動きでは、Anthropicが非営利のフロンティアAI評価機関METRのチームに「従業員レベル(employee-like)」のアクセスを提供開始したと発表しました。METRはリスク評価の結果を自ら公表し、TechCrunchの報道によると、Anthropicはその公表をブロックする権利を放棄しています。

これは先月の「独立した第三者評価の強化」のコミットメントと、ホワイトハウスの超知能合意(White House Accord on Super Intelligence)への調印に続く施策です。計算資源や訓練情報など、企業がそのまま公開できない情報への深いアクセスを第三者に与え、証拠に基づく評価を公表してもらう——Anthropic自身は銀行の監督に近い発想だと説明しています。評価者にはSecureBioとAccentureも名を連ね、Hugging Faceなど他組織とも初期の協議が進んでいるといいます。評価の独立性を保つため「対象企業の株式を持たない・財政的に依存しない」条件も明示されました。

GPT-6-Astraは理論物理の未公開問題50問中49問を解決——ただし「taste」が足りない

研究面では、The Decoderの報道によると、GPT-6-Astraが未発表の理論物理学の計算問題50問を出題するベンチマーク「TheoPhysEval」で49問を解決しました。1問あたりのコストは2.40ドルで、正確さは一流の専門家と同等とされます。興味深いのは、エージェントが失敗したように見えたケースの一部で、専門家側の参照解法自体に誤りが見つかった点です。

ただし研究者たちは「物理では数学のような突破にはまだ至っていない」と分析しています。エージェントには「taste(選球眼)」が欠けているためだといい、どの問題に取り組む価値があるかの判断までは任せられないとされます。一方で自律的なトップレベルのAI研究は近づいているとの見方も示され、若手物理学者の育成方法や研究機会の均等への影響についても議論が始まっています。

そのほかのトピック

  • Bank of Americaが4,000人体制で脆弱性修正: The DecoderがCNBC報道として伝えるところによると、AnthropicのMythosなどAIモデルが発見したソフトウェア脆弱性の修正に、4,000人(うち外部契約者1,000人)を投入しているといいます。AIが見つけ、人間が直すという分担が早くも大規模化しています。
  • Rivianの車にAIエージェント: TechCrunchによると、RivianはEVへのAIエージェント搭載に向けて動いており、詳細は12月の「AI & Autonomy Day」で発表される見込みです。
  • BlueskyのAttieを拡張: TechCrunchによると、AIでウェブサイトやゲーム、クイズを作れる実験プラットフォーム「Attie」が拡張され、誰でも作ったものをソーシャルネットワークの聴衆に届けられる「ソーシャルバイブコーディング」を目指します。
  • Google「Universal Cart」米国展開: TechCrunchによると、複数ストアをまたいで買い物をまとめられるツールが、Google検索とGeminiアプリで米国内で利用可能になりました。