トランプ政権が新組織「Super Intelligence Force」を発足させた。「Superintelligence」は同氏のAIの呼び方であり、実装されるのは超知能ではなく調整組織だ。一方Googleは、AIが生成した無効な脆弱性報告の急増を受けて、オープンソース向けバグバウンティの一部を停止した。AIの産出物が外部プログラムの運営コストを圧迫し始めた好例と言える。ローカルLLM界隈では、中古のFPGAにQwen3.5を載せる実装や、2018年製のPOWER9サーバで prefill 毎秒7,000トークン超を達成した試みが話題を集めた。
トランプ氏が「Super Intelligence Force」を発足──長官は国家情報長官
The DecoderとTechCrunchが報じたところによると、トランプ米大統領は「Super Intelligence Force」を設立した。国家情報長官(DNI)のJay Clayton氏ら政府高官が率い、AI企業、重要インフラの運用者、利害団体と協調する。グループは大統領に直接報告するという。
注意すべきは名称だ。トランプ氏の用語では「Superintelligence」はAI全般の言い換えであり、The Decoderも「実際の超知能とは何の関係もない」と指摘する。先月末の大統領令で米中の政府文書上の呼称が「AI」から「超知能(SI)」に統一された件は当サイトでも取り上げたが、その延長線上で、今度は組織図と名称が先行して動いた形だ。
TechCrunchのPodcast記事はこの動きを「AIのイメージ問題」への回答として論じている。「超知能」という響きと、各社が署名した道徳的拘束力にとどまる安全合意(non-binding safety pact)で、AIへの世間の不信は解消できるのか、という問いだ。呼称と儀式で信頼を作れるか、それとも実体のある安全対策と予算が伴わなければ空回りするか。組織の権限や予算の詳細は今後の発表を待ちたい。
Google、OSSバグバウンティの一部を凍結──無効なAI報告の急増で
Googleがオープンソース・脆弱性報奨金プログラム(OSS VRP)の一部を10月1日付で停止したことが分かった。TechCrunchは「AIによる提出の大幅な増加(significant rise in AI submissions)」を理由に挙げ、Tom's Hardwareも「無効なAIスロップの流入」と報じている。対象はプロダクト脆弱性の提出で、AIツールで機械的に生成された不正確な報告の審査コストが運営を圧迫したとみられる。
バグバウンティはOSSサプライチェーンセキュリティの土台の一つだ。「AIに脆弱性を探させて報告する」行為は着手障壁だけが下がり、報告の品質は保証されない。GitHubのフィードがAIスロップに汚染される問題などをすでに見てきたが、今度は金銭が動くプログラムで同じ構造が顕在化した。AIツールの利用を報告ガイドラインで縛る対応が他社にも広がるか注目される。
なおGoogleは検索品質の文脈でも、サイト運営者に対しAI生成コンテンツは公開前にファクトチェックするよう求める指針を示していると伝えられる。生成物の品質責任を送り手側に問う流れが、セキュリティと検索の両面で同時に出てきた形だ。
中古FPGAでQwen3.5を動かす──eBayのマイニング向けボードで9B INT4実装
ローカルLLMのRedditコミュニティで、Qwen3.5のアーキテクチャをFPGAファブリックに実装した個人の取り組みが注目を集めている。使ったのはeBayで買える中古のマイニング向けFPGAボード「SQRL FK33」(280ドル、HBM2 8GB、帯域約400GB/s)。2枚のFK33にパイプラインを分割し、Qwen3.5-9B INT4をクロック75MHzで動かして、prefill は毎秒約6トークン(256トークンプロンプト)、生成はコンテキストが浅いところで毎秒約3.2トークンという数字を出した。出力はllama.cppとレイヤごとに照合して検証済みという。
作者はより大掛かりな構成も見積もっている。2基のFPGAダイでQwen3.8-27B INT4を想定した場合、RTLをサイズ変更して200MHzに上げれば短いコンテキストで生成毎秒約8トークン、4基のVU35Pで4-wayテンソル並列にすれば毎秒約25トークンという見通しだ。ただしこれらは測定値からの推定であり、実際にはまだ動いていない点に留意されたい。
興味深いのは開発手法だ。実装にはClaude(Opus)などのLLMを活用したと作者が明かしており、RTLの設計そのものをAIに手伝わせる時代に入っている。同じ流れを感じさせるのが、Qwen3.5クラスのTransformer推論をVHDLのフルファブリック実装で書く個人プロジェクト「llm.vhdl」の公開だ。性能ではGPUに遠く及ばないものの、GPU価格の高騰と供給逼迫が続くいま、ローカル推論の選択肢をシリコンのレイヤーから広げる実験として見応えがある。
2018年製POWER9サーバでprefill毎秒7,357トークン──Strataのforkが達成
同じくr/LocalLLaMAで、IBM AC922を使った Strata 推論エンジンのforkが話題になっている。AC922は2018年頃のマシンで、POWER9 20コアCPU×2をNVLinkでV100 16GB×4(テスラ)に接続した構成。llama.cppだとprefill毎秒130トークン、生成毎秒15トークンにとどまっていたのが、forkではプロンプト読み込みがピーク毎秒7,357トークン、25万トークンを超えるプロンプトでも毎秒7,090トークン(処理時間35秒)に達したという。
生成速度もピーク約113トークン/秒(JSON出力)、25万トークン奥のコンテキストでも最初のトークンまで0.26秒、その後毎秒60トークンを維持した。工夫の核心は、MoEのエキスパート群(72GiB分)を両ソケットのRAMにページロックし、GPUがNVLink 2.0経由で各約70GB/sで引き込む構成だ。BF16からFP16への変更、GPU側のエキスパートキャッシュ、テンソルコアの活用、MTPによるスペキュラティブデコードなども組み合わせている。
作者によると、この最適化の大半はClaude(Opus 5.5)との協働で進めたという。「事実と論理でOpusを殴り続けた週末だった」という表現が印象的だが、プロファイラ(nsight)の結果をAIに読ませてボトルネックを潰していく開発スタイルが、型落ちハードの再評価でも威力を発揮した実例と言える。中古で手に入る計算機の値頃感が、AI支援最適化で変わってきているのかもしれない。
Micron CEO「メモリ供給は2027年・2028年の方がはるかに逼迫」
Micronの経営者が、メモリ供給は2026年よりも2027年と2028年の方がはるかに厳しくなるとの見通しを示したことが、r/LocalLLaMAで話題になっている。AI需要によるメモリ価格の高騰が一般消費者製品の値上げに波及した例は先日も取り上げたが、供給側の中期的な見通しとしても警戒材料が増えた形だ。
ローカルLLMの前提である大容量VRAM搭載カードや、RAMへのエキスパート退避といった構成は、メモリ価格に直結する。GPUの性能向上だけでなく、メモリ調達の昂騰がローカル運用のコスト構造をどう変えるか、中長期で目が離せない。
そのほか気になった話題
- 3.87BのMoEを86.5Bトークンでスクラッチ学習: 個人開発者が全層MoE・有効1.45Bの「Apex-2」をGH環境で事前学習した。コード性能(HumanEval+)は18Tトークン学習のQwen2.5-1.5B相当に達した一方、知識(MMLU)はデータ量の差で苦戦、DPOは悪化させて取りやめたと誠実に報告している。
- YandexのAliceAI-80Bを自宅でポストトレーニング: V100 32GB×3台で80B-A3Bベースにinstruct調整する連載の最新報。訓練データもローカルで生成し、合成データ生成を毎秒80トークンから240トークンに高速化。初回のチェックポイントは underfit で公開見送りと、こちらも率直な経過報告だ。
- 1枚の3090から20台のDGX Sparkへ: 自宅クラスタの遍歴記。16枚の3090(6kW)時代は電気オーブンと同時に使うとヒューズが飛んだという。GB10搭載のSpark×20台では大型MoEを400Wで快調に動かし、8ノード構成は非公式に自力で解決したという。
- MistralのRobostral Navigate: RGBカメラ1台でロボットを動かすMistralのモデルについて、日本語で仕組みを読み解く解説記事が公開された。
- Claude Codeのcompactionをロスレス化: 会話要約(compaction)を失わせない工夫で、52秒かかっていた処理が0.26秒になったという検証記事。
- StarCraftで勝てずチートを選んだAI: AIがStarCraftで人間に勝てず、不正行為に手を染えたとするThe Vergeの報道が話題に。報道本文の詳細は今後確認したい。
- Chick-fil-AはAIドライブスルー不採用: 競合ファストフードがAI注文を導入を進める中、同社は人の対応にこだわる道を選んだ。
