2026年9月25日夜のまとめ。開発者文化と計算資源をめぐる報道が目立った一日だった。Ruby on Railsの生みの親であるDHH氏が「手書きコード」からの引退を公言し、AnthropicはAkamaiとの大型契約で計算資源の調達総額を急拡大させた。製品面ではMetaのエージェント「Muse」がユーザー全員に無償のクラウドPCの提供を始めている。さらに、NSAや米医療現場でAIのコストが膨らみ始めた実態も報じられた。
DHH氏が手書きコード引退──「英語はRubyより優れたプログラミング言語」
Ruby on Railsの作者として知られるDavid Heinemeier Hansson(DHH)氏が、Rails World 2026の講演で、25年間続けてきた手書きのコーディングをやめたと明かした。2026年3月以降、コードを1行もタイプしていないという。
氏は「英語はRubyより優れたプログラミング言語だ」と聴衆に語り、現在のAIコーディングを「コンピューティングの歴史で起きた最大の出来事」と評価した。印象的なのは、わずか1年前にはAIコーディングに懐疑的な立場を取っていた点だ。熟練開発者の代表格だった人物がここまで態度を変えたことは、AIコーディングが実務に浸透しつつあることの象徴といえそうだ。
AnthropicがAkamaiと116億ドルのクラウド契約──計算調達は総額5,170億ドルに
AnthropicがAkamai Technologiesと7年・116億ドル規模のクラウド契約を結んだと報じられた。契約に合わせて、AnthropicはAkamai株式の最大5%を取得できるワラント(新株予約権)を受け取る見通しだ。報道によれば、同社の計算資源契約は直近11ヶ月で総額5,170億ドルに達しているという。
規模だけでなく構造にも特徴がある。単発の調達ではなく、株式ワラントを伴う長期の資本提携に近い形で計算資源の確保を進めている点だ。一方で、Dario Amodei CEOは収益予測がわずかに外れても会社が破産しかねないと警告しており、巨額の先行投資と収益のバランスが今後の焦点になりそうだ。
Meta「Muse」は全ユーザーに無償のクラウドPC──Ubuntu環境と監視プロセス「Sentinel」
MetaはAIエージェント「Muse」の全ユーザーに対し、Ubuntu Linuxが動作するクラウドコンピュータを無償で提供している。ユーザーはこの環境にソフトウェアをインストールし、コードを書き、ウェブを閲覧できる。エージェントに「会話」ではなく「実行環境そのもの」を配る設計で、初週に50万人を超えるユーザーを獲得した製品の次の一手となる。
セキュリティ面では、ワークスペース外の機密性の高い操作を「Sentinel」というプロセスが監視する設計。その一方で、ユーザーはシステム内の全ファイルを検査でき、何が起きているかを自分の目で確かめられるという。透明性と安全性の両立を狙った設計とみられるが、クラウドPCという形でエージェントに実行基盤ごと渡すアプローチがどこまで受け入れられるかは、今後の展開を待ちたい。
NSA・病院・保険──AIの導入コストが膨らみ始めた実態
The Washington Sunの報道を紹介する形で、The DecoderがAI導入に伴うコスト増の実態を伝えた。NSA(米国家安全保障局)は先進的なAIモデルのテストだけですでに数十億ドル規模を支出しており、その大半は計算資源への投入という。連邦議会では、AIの本格的な監視には年間数百億ドルが必要になるとの見方が広がる一方、議会予算局(CBO)の従来推計は2,000万ドル程度にとどまっており、見積もりの乖離そのものが論点になりつつある。
米医療分野では、AI支援の請求コーディングによって2年間で約10億ドルのコストが増加したとされる。AIが業務を効率化する一方で、導入と運用のコストを誰がどう負担するのかは、政府でも民間でも避けて通れない問題になりそうだ。
数分で復活した古いゲーム──AIにレガシー移植を任せた体験談
Hacker Newsでは、AIエージェントで古いゲームを新しいmacOSで動かしたという報告が話題になった。投稿者は『Aviary Attorney』というゲームを最新のmacOSで起動しようとしたが動かず、試しにAstraに相談したところ、数分もしないうちにゲーム画面が表示されたという。
原因は、ゲームが32ビット版のNode-WebKit(Node.jsとChromiumの組み合わせ)を使っており、現行のmacOSでは動作しないこと。ただしゲームの中身はHTML・JavaScript・画像・音声でできていたため、ランタイムの置き換えという「面倒だが筋の通った作業」で対応できた。投稿者自身「今回は運が良かった」と認める通り、何にでも効くわけではないものの、レガシー環境の移行作業をAIが短時間でこなす事例として参考になる。
