AI開発の減速をめぐる議論が、外交と金融市場を巻き込む展開になった一日だった。米AI企業の経営者らによる減速呼びかけに対し、中国外務省が「恐怖煽りだ」と反論。米国ではAI関連株が下落し、日本のソフトバンクやキオクシアなどにも波及した。その一方で、AppleのSiriを外部LLMと交換できる設計を示すコードが話題を集めるなど、減速論以外の動きも届いている。本日のニュースを整理する。

中国、AI減速論に「恐怖煽り」と反論──対立構図が鮮明に

AnthropicのDario Amodei氏ら米AI業界のリーダーが相次いでAIリスクを警告し、開発ペースを落とすべきだと訴えたことに対し、中国側が明確に反論した。The Decoderの報道によると、中国外務省は米側のAI安全性警告を「恐怖煽り(fearmongering)」と切り捨てた。さらに中国の安全保障担当相も開発減速ではなくAIインフラの加速整備を求める立場を示しており、警告の背景には「米国が自国の優位を固定化しようとしている」との見方も紹介されている。

CNBCとForbesも中国側の「恐怖扇動(fear mongering)」批判を伝え、BBCは中国が「悪意ある競争をしている」という批判そのものにも反論したと報じている。減速論は米国の国内議論にとどまらず、米中関係の文脈で捉えられ始めたといえる。

米側の動きも続いている。WIREDの記事によれば、Amodei氏がワシントンに開発減速を訴えたのを受け、Sam Altman氏とElon Musk氏も週末に自制の呼びかけを支持したという。一方、トランプ政権は減速の責任を企業側に委ねる構えを示し、トランプ氏自身は中国に対する米国の優位維持を優先する姿勢だと伝えている。先に報じられた訓練前の安全チェックや競合他社との自主規制協議といった具体化の流れと並行して、「誰がペースを決めるのか」をめぐる綱引きが続く見通しだ。

減速論の余波でAI関連株が急落

市場にも波及している。BBCは減速論の高まりを受けて米テック株が下落したと伝えた。国内でもITmedia AI+が、米AI開発企業が「人類への脅威を防ぐには開発ペースを落とす必要がある」と警告したことを受け、ソフトバンク、キオクシア、東京エレクトロンといったAI関連株が急落したと報じている。安全性の警告が投資家のリスク認識に直接影響を与えた形で、今後の規制動向や企業側の対応を見極めながら変動が続くとみられる。

AppleのSiriはClaudeやChatGPTと交換可能──コードが示す設計

MacRumorsの報道がHacker Newsで注目を集めている。Appleのコード解析から、SiriのAI機能をClaudeやChatGPTに交換できる設計になっていることが分かったというものだ。ユーザー側でどこまで選択できるようになるかは現時点では不明だが、端末側のアシスタントとバックエンドのLLMを分離し、複数のモデルを差し替え可能にする設計が進んでいることを示唆する報道として注目される。

欧州の政治家100人超がディープフェイクサイトの標的に

WIREDの調査報道によると、性的なディープフェイクを掲載する160のウェブサイトを分析した結果、22カ国の政治家100人以上が登場し、そのほぼすべてが女性だったという。生成AIの悪用が既に政治家個人への攻撃手段として広く使われている実態を示すデータで、規制をめぐる議論に影響を与えそうだ。

ローカルLLM: K2 Horizon 7Bが話題、llama.cppにはMaple 20B-A1BのPR

ローカルLLM界隈では、K2 Horizonシリーズ(特に7B)の評判がReddit r/LocalLLaMAで話題になっている。投稿者による報告では、7Bモデルがはるかに小さいサイズで他モデルを大きく上回る成績を示したといい、「ベンチマーク最適化ではなく実際に強い」のであれば新たなマイルストーンになり得るとの声もあった。訓練の全過程をオープンにしている点も評価されている。

またllama.cppには、Maple 20B-A1Bという三値(ternary)MoEアーキテクチャを追加するプルリクエストが提出されている。総パラメータ20B・アクティブ1Bという構成でCPUでの動作を見込んでおり、VRAMが限られる環境で大型MoEを動かしたいユーザーに関心が集まりそうだ。

おわりに

減速論は「警告→反論→市場の反応」という新たな段階に入った。安全性の主張が地政学と金融の言葉で読み替えられ始めたいま、技術側の進化(SiriのLLM交換、ローカルLLMの低資源化)は並行して進み続けている。次の焦点は、米国側の規制の具体化と、それに対する中国の実質的な対応だろう。