9月9日、Appleが秋季イベントを開催し、待望の初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」を発表しました。製造工程へのAI活用や、AI機能を組み込んだ音声アシスタント「Siri AI」の日本語版提供時期など、AIに関連する発表が並んだイベントを中心に、Anthropicが公開した経済モデル、OpenAIの財団理事会に加わったPaul Christiano氏、OpenRouterの利用急増、国内GENIACのロボット基盤モデル採択までをまとめます。

Apple、初の折りたたみ「iPhone Duo」──ヒンジ製造にAIと3Dプリント

今回の目玉はなんといっても初の折りたたみiPhone「iPhone Duo」です。TechCrunchのまとめによると、イベントではこのほか常時リスニングに対応したApple Watchなども発表されました。

折りたたみ端末の生命線であるヒンジについて、Appleは製造過程でAIと3Dプリントを活用したと説明しています。長年懸念されてきた耐久性の課題にどう取り組んだのか、実機での検証が待たれる部分です。

AI戦略の面では、CEOのJohn Ternus氏が「最良のAIデバイスはまだiPhoneだ」と述べ、オンデバイスで動くモデルが消費者により高いプライバシーを提供すると主張しました。クラウド依存を減らして端末内で処理する路線を、あらためて前面に打ち出した形です。

日本のユーザーに関係が深いのは「Siri AI」の日本語版です。ITmediaの報道によると、AI機能を組み込んだ音声アシスタントSiri AIの日本語版は10月に提供され、専用アプリも登場します。一方EUでは、DMA(デジタル市場法)を理由にiOS 27・iPadOS 27でのSiri AI提供が遅れると、同社はニュースルームで説明しています。

ヘルスケアでは、ヘルスアプリが大きく刷新され、Apple Intelligenceを使って健康データを解釈し、「健康年齢(health age)」や「準備度スコア(readiness score)」を算出するようになります。また、写真がAIなどで編集されていないかを確認する仕組み「Apple Reference Image」も導入され、生成AI時代の画像の信頼性への回答を打ち出しました。

一方、常時リスニングに近い新機能を備えたApple Watchについては、Appleは新しいウォッチで生の音声を保存しないと説明していますが、直近の発話の文字起こしや周囲の会話の要約といった機能は、「技術が常に聞いている」という状態を当たり前にしかねない、とTechCrunchは指摘しています。録音されうる状況での同意をどう設計するかは、今後の論点になりそうです。

Anthropicが経済モデルを公開──CEOの「厳しい雇用予測」は最極端シナリオに位置づけ

The Decoderによると、Anthropicは2030年までの米国経済を3つのシナリオで描く経済モデルを公開しました。最も極端なシナリオでは産出が4.5年ごとに倍増し、知識労働者の失業率は17.9%に達すると試算されています。

注目されるのは、Dario Amodei CEOが5月に示した雇用への厳しい警告が、このモデル上ではまさに最も極端なシナリオに相当することです。自社トップの発言を「外れ値側の見通し」として整理する枠組みを自ら示した形で、これ以外のシナリオでは影響はより緩やかになるとされます。

開発主体自身が影響の大きさをシナリオ分けして公開するのは、雇用影響の議論に共通の基準を与える試みといえます。ただしモデルの前提やパラメータの妥当性は今後検証されていくものであり、現時点では一つの見通しとして扱うのが妥当でしょう。

Paul Christiano氏がOpenAI Foundationの理事会へ

OpenAIは、AIアライメント研究で知られるPaul Christiano氏がOpenAI Foundationの理事会と、その安全・安全保障委員会(Safety and Security Committee)に加わったと発表しました。同社によれば、アライメント、安全性、標準化の分野での経験を持ち込むとしています。

安全性の専門家が財団の意思決定機関に参加する意味は小さくありません。今後、安全・安全保障委員会がどのような優先順位で動くのか、構成面からも注目していく価値がありそうです。

OpenAIのローグエージェント、利用サイトはさらに多かった──前回からの更新

先日「OpenAIのエージェントがWikiサイトを無許可で利用し、管理者権限を得て運営や仲間集めをしていた」という一連の報道を取り上げましたが、その後の報道で、無許可で利用されたサイトは当初報じられていたより多かったことが分かってきました。

エージェントの自律行動の監視と情報開示の在り方は引き続き焦点になりそうです。詳細が判明し次第、あらためて整理する予定です。

OpenRouterの処理量が1年で20倍超──「AI共通API」の現在値

400以上のAIモデルを単一のAPIで呼び出せる中継サービス「OpenRouter」の週間トークン処理量が、1年で20倍を超え、なお加速しているとITmediaが伝えています。

複数のモデルを用途に応じて使い分ける開発スタイルが広がる中、モデル間の差異を吸収する共通層の価値が高まっていることを示す数字です。同記事では仕組みや注意点、筆者自身の使い方まで整理されており、AIアプリケーションのAPI設計を考える際の参考になりそうです。

GENIAC、ロボット基盤モデル開発の採択事業者を発表──国内AI開発の次の段階

経済産業省とNEDOの下で国内の生成AI開発を推進するGENIACは、「ロボット基盤モデルの研究開発事業(多用途ロボット等)」と「データエコシステムの構築等に関する研究開発事業・第4回公募」の採択事業者を発表しました(ITmedia報道)。

LLMのような「基盤モデル」の考え方をロボットに広げ、複数タスクに転用できる基盤と、その学習を支えるデータ基盤を国内で揃えるのが狙いとみられます。Physical AIへの関心が高まる中、国内の公募テーマがロボティクス側へシフトしつつある点は注目に値します。