今日の海外AIニュースから、コンピュート調達の巨額化、モデルのエージェント能力、AI創薬の臨床結果、市場シェアの変化、オープンモデルの最新リリース、AEO(回答エンジン最適化)調査の6トピックを整理します。
Anthropicが最大5,170億ドルの計算契約──「警告した側」が追い上げる構図に
The Decoderの報道によると、Anthropicは過去11ヶ月で最大5,170億ドル相当のコンピュート契約を結んだとみられています。ただしOpenAIが2030年までに計画する7,500億ドル規模にはまだ及ばず、業界2位の調達規模という位置づけです。
象徴的なのは、2026年初頭にCEOのDario Amodei氏自身が「あまりに速い投資は危険」と競合に警告していた点です。それから半年余りで、同社は追い上げる側に回っています。一方でSam Altman氏は、特にneo-cloud系プロバイダーを中心としたコンピュート整備について「持続不可能な愚かさ(unsustainable silliness)」と批判しており、大手間の拡張競争を巡る評価は割れています。
先に報じたCrusoeの300億ドル評価額での資金調達やOpenAIの10億ドル級インフラ投資と合わせると、フロンティアモデル開発に必要な計算資源の調達規模が、もはや国の予算に近い水準まで膨らんでいることがうかがえます。
GPT-6 Astraがパズルゲーム「Portal」を人的支援ゼロでクリア
開発者cozyblaze氏が、GPT-6 Astraを使ってValveのパズルゲーム「Portal」を最初のゴール設定を除き人的支援なしで攻略したと報告しました。所要時間は約24時間。使用したコードとドキュメントはGitHubで公開されています。
同氏のまとめは「Astraは我々が手にする中で最も悪いモデルだ(the worst model we'll ever get)」──つまり「今後もっと良いモデルが来る」という意味の逆説的な評価です。空間推論と試行錯誤が要求されるゲームを、外部の人間の介入なしに最後までやり切ったことは、エージェント型モデルの実用段階を示す一つの節目になりそうです。
AI設計薬rentosertib、初期試験で「生物学的若返り」を示唆
Nature Biotechnologyに掲載された研究によると、Insilico MedicineがAIで設計した薬「rentosertib」が、生物学的加齢のマーカーを逆転させる可能性が報告されました。6つの独立した「老化時計」の予測では、治療を受けた患者はプラセボ群と比べて生物学的に最大6歳分若いという結果でした。
ただし留保も大きく、試験は42人の患者を対象とした初期段階のもので、健常者での試験はまだ行われていません。「若返り薬」と断定する段階ではなく、あくまで早期の生物学的指標の変化にとどまります。とはいえ、AI創薬が設計から臨床の初期データまで到達した実例として注目に値します。
ChatGPTのシェア55.5%に回復──GeminiとClaudeの追い上げは続く
Similarwebのデータによると、AIチャットボットのWebトラフィックに占めるChatGPTのシェアは55.5%まで戻し、Geminiの一時的な巻き返しを退けました。ただし前年比では73.3%から大きく低下しており、構図は変わりつつあります。
同期間にGeminiはシェアを倍増させ、Claudeは約5倍に伸びています。またこの数字はWebトラフィックのみを対象としており、モバイルアプリやデスクトップクライアント経由の利用は含まれていません。「ChatGPTが首位を守る一方、2位以下の伸びが市場全体の拡大を上回る」という読み方ができるデータです。
K2-HorizonのMoVA版「36B-A4B」最終チェックポイントが公開
Hugging Faceで、K2-Horizonファミリーのスパース版「K2-Horizon-MoVA-36B-A4B」の最終チェックポイントが公開されました。以前このブログでも紹介したK2-Horizonシリーズの一員で、Mixture-of-Expertsに加えて注注意力機構にMixture-of-Values(MoVA)を採用し、総パラメータ36B・トークンあたり4Bの構成です。
ベンチマークでは、4Bのアクティブパラメータでエージェント・推論系タスクにおいて同規模帯のdenseモデルはもちろん、サイズで最大15倍のMoEモデルを上回るスコアを記録。Terminal-Bench 2.1で58.6、GPQA Diamondで80.8など、クローズドのフロンティアモデルとも競合する水準とされています。コンテキスト長はミッドトレーニング段階から512K。中間チェックポイント・学習データ・学習コードの公開も予定されており、「徹底オープン」の方針が引き継がれています。
Latent Spaceが「Frontier AEO Tracker」公開──モデルごとの推薦バイアスを可視化
AIメディアのLatent Spaceが、7つのフロンティアモデル×6種類のプロンプト×161カテゴリで「AIが何を推薦するか」を測るFrontier AEO Trackerを公開しました。回答の抽出にはAstraを使い、第一選択・代替候補・言及に重みを付けた独自のAEOスコアで評価しています。
結果からは、コーディングエージェントの推薦ではFableやOpusがClaude Codeを、SolやAstraはCodexを、GrokはCursorを、MuseはMuse Codeを選ぶなど、各社が自社系のツールを推しやすい「ソフトなバイアス」が浮き彫りになりました。一方でGPT系がClaudeを推薦する例もあり、161カテゴル中28カテゴリでは全モデルで同一の第1選択が支配的だったといいます。汚染チェックは実施済みで、全プロンプトと回答のペアは閲覧可能です。LLMの回答に自社製品を出してもらう「AEO」はSEOの次の戦場とされており、その実態を測る最初の大規模データになりそうです。
まとめ
計算資源の調達は国の予算規模に達し、モデルは人間の助けなしにゲームを攻略し、AI設計薬は臨床の初期データを出し始めた。能力の伸びと、そのコストやリスクを巡る議論の両方が同時に加速している──今日のニュースはその構図が鮮明になる1日でした。
