AWS、BedrockにWeb検索グラウンディングを一般提供
AWSは8月4日、Amazon Bedrock上でモデルの回答を最新のウェブ知識で根拠づける「Web Search」の一般提供(GA)を発表した。サードパーティの検索ベンダーを個別に統合したり、外部APIをオーケストレーションしたり、追加のセキュリティ審査を通したりする手間なしに、API呼び出しのパラメータ1つで有効化できる点が特徴だ。
Amazonが自ら運営する数十億規模のウェブインデックスと、エンティティの関係を保持するナレッジグラフを組み合わせる。問い合わせが事実性の高い内容であればナレッジグラフで確度の高い回答を導き、検索結果はモデルのコンテキストに最適化した意味的スニペットとして渡される。遅延を抑えつつ、根拠付きの回答と出典注記を1往復で返す設計という。
OpenAI Responses API互換のエンドポイント経由で呼べるほか、CloudTrailで呼び出しの監査が可能。ただしクエリ本文や取得したURL、ページ内容は記録されず、プロンプトと同等に扱われる。データエグレスはデフォルトでゼロで、処理はリージョン内に留まる。企業向けAIにおいて、RAG構築の運用負荷を下げる一歩と言えそうだ。
OpenAI、ChatGPT WorkとCodexに教育プラグインを追加
OpenAIは同じく4日、ChatGPT WorkとCodex向けに教育向けプラグインの提供を始めたと発表した。K-12の教員、大学の教育者、学生が、学習や研究、構築を進めるうえで役立てる想定で、ChatGPT Workを教育現場に定着させる動きの一環とみられる。
同日、技術系メディアのLatent SpaceがChatGPT Workの内部構造を外部から復元する詳細な解説を公開した。Memory(記憶)、Proactivity(能動的提案)、Scheduling(予約実行)、Browser Use(ブラウザ操作)、Plugins、Skills、Toolsがどのように連携するかを整理しており、「10億ユーザー向けのエージェント」としての設計思想が読み取れる内容だ。
Liquid AI、2.6Bパラメータのエージェント特化モデル「LFM2.5-2.6B」
Liquid AIは、デバイス上での動作を想定したハイブリッドアーキテクチャのモデル群「LFM2.5」から、2.6Bパラメータの「LFM2.5-2.6B」を公開した。128Kコンテキストに対応し、エージェント用途のポストトレーニングを施している。
推論効率の高さが目を引く。Apple M5 Maxで220 tok/s、AMD Ryzen系CPUでも113 tok/sを達成し、メモリ使用量は2.5GB未満に収まるという。ツール使用や指示追従、多段階のエージェントタスクでは4倍大きいモデルに匹敵する性能を謳う。主要なエージェントフレームワークの内部で強化学習を行い、互換性を高めた点も特徴だ。RedditのLocalLLaMAコミュニティでも公開直後に話題になり、大量の文書処理など「シンプルで高頻度なタスク」向けの小型モデルとして期待する声が出ている。
LLMは「正しいコードの削除」が苦手、CanItDeleteが指摘
Hugging Faceに公開された論文「To Add Is Machine, To Delete Is Human」は、フロンティアモデルがソフトウェアエンジニアなら意識すらしない作業――「正しいコードを削り、止めること」――で苦戦する実態を浮き彫りにした。削除だけを行う200の実タスク「CanItDelete」を構築し、保持しすぎる、部分的にしか消さない、消しすぎる、境界を間違える、といった失敗を診別する。
結果は厳しい。行を指定してもらった場合でもGLM-5.2は12%、GPT-5.6 Solは18%、Qwen3-235Bは42%が失敗し、Claudeは97.7%に達した一方で、ローカライズが進むと今度は消しすぎに振れるモデルもあったという。
より興味深いのは、実際のリポジトリ作業で現れる「Guard-and-Go」というパターンだ。古いロジックを削る代わりに、ガードやフォールバックの裏に残したままにしてしまう現象で、主要なSWE-bench Verified提出の29%に見られたという。テストは通ってもマージできる品質ではない。一方で、削除に特化したデータをわずか0.7%追加しただけで未完成削除が13.9ポイント減少し、SWE-bench Verifiedも5.3ポイント改善したとのこと。コードを書くだけでなく「もはや存在してはならないもの」を学ぶ必要がある、と論文は主張している。
llama.cpp、よく使うMoEエキスパートをキャッシュするPR
ローカル推論エンジンのllama.cppに、よく使われるMoE(専門家)層のエキスパートをVRAMにキャッシュするPR(#26563)が提案された。すべてのエキスパートをGPUに置くかCPUにオフロードするかの二択だった従来に対し、使用頻度の高い「ホット」エキスパートだけをVRAMに残し、低温のエキスパートはCPUで動かし続ける仕組みだ。
Qwen3.6-35B-A3Bを8GB VRAMで動かした投稿者の実測では、Q2_Mで33.25→56.0 tok/s(1.68倍)、Q5_K_Pで17.34→35.93 tok/s(2.07倍)と報告されている。コンシューマーGPUでも大型のMoEモデルを实用速度で動かせる可能性を示す、ローカルLLM派にとって注目の改善だ。
ピューリッツァー賞、AI使用の開示が過去最多に
2026年のピューリッツァー賞では、AIの使用を開示した受賞対象が過去最多の8件(うち5件が受賞)に上った。Wall Street JournalやAPなどが、主に大量の文書群の検索を高速化する目的でLLMを利用したという。一方で、ピューリッツャー管理者のMarjorie Miller氏は、記事の執筆や編集にAIを用いることは認められないという方針を改めて示した。ニュース編集室におけるAIの「検索・分析補助」と「制作」の境界線が、徐々に形作られつつある状況がうかがえる。
Anthropic、初のChief Global Affairs OfficerにCuéllar氏
Anthropicは、政策・国際戦略・政府関係を統括する初のChief Global Affairs Officerとして、Mariano-Florentino(Tino)Cuéllar氏の就任を発表した。カーネギー国際平和財団の元総裁で、カリフォルニア州最高裁判事やスタンフォード大学の研究機関の代表も歴任した経歴を持つ。同社のLong-Term Benefit Trustの理事も務めていたが、就任に伴い退任するという。主要国でAIの規制と産業政策の議論が本格化するなか、政府との対話を強化する体制整備と位置づけられそうだ。
8月4日は、クラウドAI基盤の道具立てが整う動き(AWS)と、エッジで動く小型エージェントモデル(Liquid AI)、そしてモデルの「苦手」を可視化する研究(CanItDelete)が同時に目に入る一日だった。インフラ、モデル、評価の3つの層がそれぞれ一歩ずつ前に進んだように見える。