自動運転のオープンモデルが商用化の段階に入り、AIインフラへの巨額投資をどう財務から切り離すかという工夫が見え始めた8月5日。医療分野でも、単一タスクのAIから汎用基盤モデルへの移行が進んでいる。

NVIDIA、ロボタクシー向けオープン推論モデル「Alpamayo 2 Super」を商用利用可能に

NVIDIAは、ロボタクシーや自動運転車(AV)向けのオープン推論モデル「Alpamayo 2 Super」を商用利用可能としてHugging Faceで公開した。同社の「Cosmos 3 Super Reasoner」をベースに強化学習で事後学習しており、自動運転の推論モデルとしてはHugging Faceで最も採用されているAlpamayoファミリーの最新版にあたる。Alpamayo全体で50万ダウンロード超を数える。

最大のポイントはライセンスだ。Linux Foundationの寛容なオープンライセンス「OpenMDW-1.1」の下で、ファインチューニング、派生モデル、商業的再配布まで認められる。AV開発者や自動車メーカーは、自社の走行データや運転ポリシーに合わせてモデルを適応できる。これまで研究用途だった初期リリースと異なり、Alpamayoファミリー全体にこのライセンスが適用され、適応から本番展開までを自社で完結できる道が開かれた。

性能面では、自動運転の推論ベンチマーク「LingoQA」で評価された約40モデル中1位。同社のテスト(Lingo-Judge指標)では、Qwen2.5-VL 72Bを17.0ポイント、Gemini 2.5 Proを15.1ポイント、GPT-4oを23.2ポイント上回ったとされる。車両の前後左右のカメラ映像を統合して状況を推理し、計画軌道、推論の過程を示す痕跡、意図を示すメタ行動をまとめて出力できる。設計は、開発者が「モデルが何を見てどう判断したか」を検証しやすくする方向に振られている。

Google、Anthropic向けチップ調達のリスクをバランスシートから分離

Googleが、AnthropicへのAIチップとデータセンター供給を支える数十億ドル規模のファイナンス構造で、大半のリスクを自社の貸借対照表(バランスシート)から外す設計を進めていることが分かった。Broadcom、Apollo、Blackstone、Morgan Stanleyと組む構造で、結果として約2000億ドル規模の契約がAnthropicの成長とリース支払い能力に依存する形になるという。

重要なのは「AIインフラへの巨額投資を親会社の財務から切り離す」動きが具体化している点だ。Google本体で計上すれば利益率や信用リスクに直結する負債を、外部の金融・インフラ事業者が担う。AI需要が膨張する中で、ビッグテックが調達リスクをどう分散させるかという、これまで表舞台に出にくかった部分が見えつつある。

なおAnthropicは別件で、設立わずか数ヶ月のクラウド新鋭Volta Infra Holdingsから100億ドル規模のコンピュートを確保しているが、こちらは前回も報じられており、本稿ではGoogle側のファイナンス構造に焦点を当てる。

Microsoft、病理診断の基盤モデル「PRISM2」を公開

Microsoft ResearchとPaige(現Tempus傘下)は、病理診断向けの基盤モデル「PRISM2」を開発し、Nature Medicineに発表した。これまでの病理AIが「特定がんの検出」など単一タスクごとに作り直されてきたのに対し、PRISM2は組織画像と病理レポートの言語データを組み合わせて学習。1つのモデルで前立腺がん・乳がん・リンパ節転移検出など複数のベンチマークで、専門システムに匹敵あるいは上回る成績を記録したという。

病理は多くのがん診断の中核にあり、レポートが治療方針を左右する。PRISM2は画像だけ、あるいは画像とテキストの双方を扱え、プロンプトで問い合わせできる。研究者は、タスクごとにゼロから作り直すことなく将来の病理ツールを構築・適応しやすくなると説明している。モデルの重みは研究目的でHugging Faceに公開されている。

NVIDIA、AIストレージ層を刷新—cuFile APIをオープンソース化

NVIDIAは、今週開かれたFuture of Memory and Storage(FMS)会議に合わせ、AIのデータアクセスを支えるストレージ層の複数の動きを発表した。最大のものは、GPUがCPUを介さず直接ストレージへ読み書きできる「cuFile API」とその下層スタックをオープンソース化すること。Google、Intel、Metaが初期メンテナーとして名を連ねる。

背景には、AIエージェントが膨大なデータを消費し、GPUが数千の並列ストレース要求を発生させる現状がある。NVIDIAのVera CPU(Vera BlueField-4 STXの一部)は、圧縮と暗号化の2段パイプラインでx86 CPUに対し最大3.21倍のスループットを示したとされる。さらにストレージ各社40社超と連携する「Storage-Next」構想や、GPUが必要なデータだけを高速メモリに直接引く枠組み「SCADA」も紹介された。AIの計算力だけでなく、データをどう速く・安全に供給するかが次のボトルネックになりつつある。

データセンターを巡る規制:テキサス州が新設停止、米政府は中国製部品の禁止を検討

インフラ拡大が続く一方で、規制の圧力も強まっている。テキサス州は緩い規制と豊富な電力を理由にデータセンターが集積してきたが、知事が新規データセンターの監査を求め、新設が停止される事態になっている。規制の緩さで知られたテキサスでも限界が見え始めた形だ。

加えて、トランプ政権はAIデータセンターでの中国製部品の使用を禁止する案を起草中とロイターが報じた。安全保障と供給チェーンの観点から、AIインフラに使われる機器の出所が改めて問われている。

Apple、OpenAIに対し営業秘密の使用差し止めを連邦判事に要請

Appleは、OpenAIが同社の将来製品に関する機密情報を組織的に奪ったとする訴訟で、即時の使用差し止めを連邦判事に求めた。OpenAIに対し、押さえた機密情報をAppleに返還し、他の非公開情報の取得も止めるよう求める仮処分で、本訴訟の進行中に効力を持つ想定。Big Tech間で、AI競争を巡る秘密情報の攻防が続いている。