Swiss-AIが完全オープンのマルチモーダルモデル「Apertus v1.5」を公開

スイスのAI研究機関Swiss-AIは、言語モデルファミリー「Apertus」の新版v1.5(70B/8B)をHugging Faceで公開した。最大の特徴は、モデル权重だけでなく訓練データと訓練レシピを完全公開している点である。

  • マルチモーダル入力: テキストに加え、画像と音声の入力に対応。出力はテキスト。
  • ロングコンテキスト: デフォルトで262,144トークン(約26万トークン)まで対応。従来の4倍。
  • 思考モード(Thinking Mode): 推論タスクで回答前に思考するモードを搭載。
  • 多言語サポート: 幅広い言語に対応。
  • 完全オープン: モデル权重・訓練データ・訓練手法のすべてを公開。データ所有者のopt-outを尊重する設計。

Apertus 1.5は、前身の1.0に追加で8Bモデルに4Tトークン、70Bモデルに2Tトークンのマルチモーダル混合データを継続事前学習したもの。xIELU活性化関数とAdEMAMixオプティマイザを採用するdecoder-only Transformerで、同等サイズの他モデルに匹敵する性能を示しているという。技術報告書は今後数週間以内に公開予定。

LLMは「進化するユーザー意図」に追いつけない

Hugging Face Daily Papersで注目を集めた研究「LLMs Get Lost in Evolving User Intent」は、静的なシングルターン設定での高性能が、動的なマルチターン会話では転移しないという現象を浮き彫りにした。

実際の対話では、ユーザーは最初から意図を完全に伝えることは稀で、会話の進行に伴って意図を徐々に明かしたり、修正したり、方向転換したりする。研究チームは、既存の静的タスクを「ユーザーの意図がターン間で進化する」動的マルチターン会話に変換するフレームワークを導入し、複数のベンチマークで検証。

結果は一貫して、モデルファミリーを問わず静的設定での高成績が動的設定にはtransferしないことを示した。これは、今後のコラボレーティブAIエージェントにとって「見えないギャップ」であり、静的評価では検知できない重大な課題とのこと。

エージェントの経験を「蒸留」する学習手法

別の注目論文「Sample-Efficient Learning from Agent Experience」は、Experience Distillationと名付けた手法を提案。エージェントが環境との対話で得た経験を、さらなる環境インタラクションなしでモデル权重にinternalizeする。

実験では、749件のソフトウェアエンジニアリングタスクと6つのテキストアドベンチャーゲームで検証。コンテキスト内学習の利得の少なくとも64.8%を保持した一方、従来の教師ありファインチューニングはわずか3.8%しか回復できなかった。また、強化学習のベースラインと同等の性能を9.6倍少ない環境サンプルで達成している。

高コストな環境インタラクションが制約となる現実のエージェント学習において、有望なアプローチと言えそうだ。

MIT Media Lab: AI動画が「実写への信頼」を損なう

MIT Media Labの研究「Seeing Is Not Believing」は、リアルなAI生成動画が実写動画に対する人々の自信そのものを揺るがしていると指摘する。

AI生成動画の品質向上により、本物の動画を見ても「これはAI生成かもしれない」という疑念が生じるようになった。研究は、この現象が視覚的証拠に対する社会的信頼に与える構造的な影響を分析している。

単に「ディープフェイク問題」という枠を超え、本物の映像の証拠力そのものが低下するという点で、法制度やジャーナリズムにも波及する問題をはらんでいる。

AIデータ供給チェーンにおける「ライセンス偽装」

arXivに掲載された「Don't Trust the Label: License Laundering in AI Supply Chains」は、AIの訓練データ供給チェーンにおける**ライセンス情報の偽装(License Laundering)**問題を指摘した論文である。

データが複数の仲介者を経て流通する過程で、元のライセンス条件が不明確になったり、より制限の緩いライセンスとして再ラベル付けされたりする現象を「ライセンス・ランダリング」と呼んでいる。これは、AIモデルの訓練データの出所と利用条件の透明性を損なう構造的な課題であり、法務やコンプライアンスの観点からも注目が必要だ。

Adeccoレポート: AIによる雇用崩壊は起きない

世界最大級の人材サービス企業Adecco Groupは、AIによって雇用の崩壊は起きないとする見解を発表した(Reuters報道)。同社は全球規模で労働市場の動向を追跡しており、AIが一部の業務を代替する一方で、新しい職種や需要も生み出すと分析している。

同テーマはX(旧Twitter)上でも「なぜAIで失業率が上がらないのか」という議論として関心を集めており、AIの雇用への実影響は短期的には限定的との見方が大勢を占めている。

パロアルト Networks: 生成AIでサイバー攻撃が「爆速化」

Palo Alto Networksのチーフサイバーセキュリティストラテジスト染谷征良氏は、SoftBank World 2026の講演で、生成AIの普及により**「2日かかる攻撃が25分に」短縮される**と警鐘を鳴らした(ITmedia報道)。

生成AIを用いた攻撃コードの自動生成やフィッシング文面の作成が高度化・高速化しており、企業は従来の防御策だけでは対応できなくなりつつある。AIを活用した防御側の対応力も同時に高める必要があると強調した。