KPMGと日立がAnthropicと相次ぎ提携――企業AI導入の波が加速

5月19日、世界的な専門サービスファームのKPMGと、日本の日立製作所が相次いでAnthropicとの戦略的提携を発表した。

KPMGは138カ国・地域で業務を展開する監査・税務・法務・アドバイザリーの大手ファームだ。今回の提携により、KPMGは自社の業務プラットフォーム「Digital Gateway」にClaudeを組み込み、税務・法務クライアント向けの新ツールから展開を始める。全世界27万6,000人以上の従業員がClaudeにアクセスできるようになる。またAnthropicはKPMGをプライベートエクイティ分野の優先パートナーに指名し、両社はPEポートフォリオ企業向けのClaude搭載製品を共同開発する。

同日、日立製作所もAnthropicとの戦略的パートナーシップ締結を発表した。日立グループ約29万人の全ビジネスプロセスにClaudeなどの先進AIを導入するほか、社会インフラ向けソリューション「HMAX by Hitachi」にも展開していくという。Anthropicは4月にNECとの協業も発表しており、日本のIT大手との提携を段階的に進めている。

KPMGのBill Thomasグローバル会長兼CEOは「責任あるAIを優先し、セキュリティ・信頼・ガバナンスを重視しながらスケールしていく」と強調している。欧米と日本をまたぐ大規模な企業AI導入が同時に進むのは、エンタープライズAI市場の成熟を示す象徴的な出来事と言える。

CloudflareがMythosで従来モデルが見逃したエクスプロイトチェーンを発見

Cloudflareは、Anthropicのセキュリティ特化モデル「Mythos Preview」を自社の50以上のコードリポジトリでテストし、従来のフロンティアモデルが見逃していたエクスプロイトチェーン(攻撃経路の連鎖)を発見したと報告した。

これは「Project Glasswing」と呼ばれるCloudflareのセキュリティ検証プロジェクトの一環で、実際のプロダクションコードベースにおけるMythosの実力を評価したものだ。Cloudflareという世界最大級のインフラ企業が自社コードで検証したという点で、Mythosの実用性を裏付ける重要なデータと言える。

以前から報じられていた「金融インフラの脆弱性発見」とは異なり、今回はWebインフラ領域での実証結果だ。セキュリティ分野における特化型AIモデルの有効性が、複数の産業領域で確認されつつある。

ByteDanceが「Lance」を公開――3Bパラメータで画像・動画の理解・生成・編集を統合

ByteDanceが、わずか3Bパラメータで画像理解・画像生成・画像編集・動画生成・動画理解を単一フレームワークでこなすオープンソースモデル「Lance」を公開した。

最も注目すべきは学習コストの低さで、128台のA100 GPUを使い、ゼロから学習させたという。画像生成・編集・動画生成の各ベンチマークで、3Bクラスとして強力なパフォーマンスを示している。

これまで「理解」と「生成」は別々のモデルで担当するのが一般的だったが、Lanceは統合アプローチを採用。マルチモーダルAIの軽量化・統合化というトレンドが、実用的なレベルに到達しつつあることを示している。

CHI-Bench: ヘルスケアAIエージェントはまだ「実用には遠い」

Hugging Face Daily Papersで公開された「CHI-Bench」は、AIエージェントが医療のエンドツーエンド業務をどこまで自動化できるかを検証する初の本格的ベンチマークだ。

医療の事前認可、利用審査、ケア管理の3ドメインについて、MCPサーバー上で高忠実度のシミュレーターを構築。各試行は60〜80ステップ、4〜6段階の臨床プロセスをまたぐ長期間タスクで、200以上のMCPツールと1,279文書の運用マニュアルを扱う。

30のフロンティアエージェントをテストした結果、最も成績が良かったのはAnthropicのClaude Code(Opus 4.6)で28%のpass@1。次点はOpenAIのCodex(GPT-5.5)で21%。同じ症例を3回実行して20%以上を安定してクリアしたエージェントはいなかった。

AIエージェントの性能が向上しているとはいえ、ポリシーが複雑で証跡が求められる医療業務においては、まだ人間の確認なしに任せられる段階ではないことが浮き彫りになった。

HRM-Text 1B: 1,000ドルの学習費で推論特化モデルが大規模モデルを超える

Sapient Intelligenceがリリースした「HRM-Text 1B」は、わずか1Bパラメータのモデルながら、数学推論ベンチマークMATHで56.2(Llama3.2 3Bの48.0を上回る)、DROPで82.2を記録した。

学習条件が極めて効率的で、16GPUで1.9日間、40Bトークンの学習データ、予算は約1,000ドル。同等の性能を持つモデルと比較して100〜900倍少ないデータで学習しているという。

「Hierarchical Reasoning Model(階層的推論モデル)」という名前が示す通り、推論タスクで特に強く、汎用的な知識(MMLU)ではまだ大型モデルに劣る。しかし、限られたリソースで特定能力を最大化するアプローチとして、ローカルAIコミュニティで大きな注目を集めている。

英国調査: AIの将来に対し「恐怖」が「希望」を上回る

キングス・カレッジ・ロンドンの調査によると、英国市民の5人に1人が「AIが市民不安を引き起こす」と考えている。AIと労働の将来について、恐怖を感じる人が希望を持つ人を上回る結果となった。

AIの技術進歩は目覚ましいが、一般社会の受容感は必ずしもそれに追いついていない。特に雇用への影響については不安が根強く、技術側の熱狂と社会的な懸念の間に乖離があることが改めて確認された。